吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2018年11月の読書リスト

師走じゃないか。
昨年の冊数に届くのは絶望的となりましたが、頑張って読むぞ!



 2018/11/5読了
 /第六天の魔王なり
 吉川永青
 渋い人物にスポットを当ててきた吉川さんが信長をどのように料理するのか
 楽しみだったが、冷酷無比ではなく人間、信長の苦悩というか心の中を描こうと
 したあまり、全体的に中途半端なイメージになってしまった気がする。
 切り口としては吉川さんらしくていいが「奪うは我なり 朝倉義景」を信長側から
 描いてみた、という感じかな。
 吉川作品は大好きだが、申し訳ありません!最後はBL小説か?と思ってしまった。



 2018/11/9読了
 /滅びの園
 恒川光太郎
 理想的な世界を夢想することが他者に絶望を与えているとしたらどうするか。
 その答えを求められたら自分のことを優先にしてしまうことはきっとある。
 自分の思う正義が他者からは不義に見えることは多々あるもので、何が正しいか
 なんてわからない。
 SF的な恒川ワールドはそんなことを描いているのだろうが、キャラや展開が
 雑な感じだったのが残念。



 2018/11/15読了
 /リンカーンとさまよえる霊魂たち
 ジョージ・ソーンダーズ
 名前に見覚えが・・・と思ったら「短くて恐ろしいフィルの時代」の著者だった。
 南北戦争中に息子ウィリーを亡くしたリンカーン大統領の苦悩と不思議な人々との
 邂逅?がアメリカのその後を決定づけたかのような描写がユーモラスかつシニカルに
 描かれている。
 実験的ながら読み易い文体だが、読み始めはどう読めばいいのか戸惑った。
 慣れてくると舞台を見ているかのように容易に映像が浮かんでくる。
 ちょっと寂しくもあるが優しく暖かいエンディングに感無量。



 2018/11/19読了
 ::フーガはユーガ
 伊坂幸太郎
 双子が主人公の物語は帯にもあるとおり、切ない。
 無慈悲で一切共感できないクズキャラが何人も出てくるが、瞬間移動とか伊坂作品で
 よく使われる言葉遊びや語り口で重い展開が少しだけ軽くなる。
 伊坂作品の殺し屋や泥棒には思い入れを持てたりするのだが。。。
 スピード感の増す後半に目が離せず、読み終わると伊坂作品らしさを感じる。
 が、リアリティを感じてしまう諸々の状況に何だかなあ、と思う。



 2018/11/21読了
 /日本4.0 国家戦略の新しいリアル
 エドワード・ルトワック
 大雑把に日本を江戸時代、明治維新、戦後で区切り、これからの日本がどうすべきか
 を示唆しているが明快で分かり易く、日本に必要なのは少子化対策というのは
 頷ける。
 核兵器のリスクや自衛隊の有り方なども参考になる。
 後半はアメリカと中国の関係を中心に分析しているが、良し悪しは別として米中が
 世界に影響を与える時代になったのだから致し方ないか。
 日本の現状、問題点を外部から冷静な視点で指摘しているが、果たして日本は
 バージョンアップができるのか?



 2018/11/25読了
 /新・冒険論
 角幡唯介
 題名の通り、冒険とは?を真剣に論じている。
 特に脱システムに関しては「極夜行」でも語られていたが、そこそこのページを
 割いている。
 価値観の変化も含めてかつての冒険がスポーツ化、レジャー化してしまうことは
 様々なシーンで起きているし、技術の進歩が冒険を身近にしているのは
 事実でしょう。
 安全性を求めるためにかなりの事前準備や大がかりな装備が必要になってしまう
 傾向に関しては、直前に読んだ「日本4.0」で言及されていたアメリカ軍の矛盾と
 似ている。



 2018/11/28読了
 ::ポリフォニック・イリュージョン
 飛浩隆
 初期の短編や書評や自作の解題、インタビューなどで構成されていて飛浩隆自身の
 キャラクターや思考、作品の理解を深めるにはもってこい。
 わかってはいたが今まで読んできた作品を理解しきれていなかったことがやっぱり
 判明。
 自身の作品に関する解説も面白いが、思い入れのある作品(映画とかも含む)への
 熱気も感じられて楽しめた。
 伊藤計劃円城塔などへの言及には意味も無く「おお、そうか~」と思った。
 飛作品を読んでいない人は何作か読んでから本書を手に取る方が良いでしょう。



7冊読了