著者:マリアーナ・エンリケス
翻訳:安藤哲行
出版社:河出書房新社
「寝煙草の危険」が面白かったので熱が冷める前に読む。
アルゼンチンのホラー・プリンセスと呼ばれる著者だが
「寝煙草の危険」同様、自分の思うホラーという括りには収まらない作品ばかりだ。
社会問題が背景にあるが故に子供や女性たちを取りまく境遇は
憂鬱なうえ不穏な描写が容赦無い。
確かにホラーだなと思える作品もあるが、受け取り方に戸惑う作品も多い。
「汚い子」「隣の中庭」「わたしたちが火の中で失くしたもの」が印象的だが
気づかなかった傷がチクチクと痛みだすような妙に落ち着かない気分になる。
もしや日本も徐々に同様な状況に向かっているのでは?と不安に駆られる。
自分であれ他人であれ、心の中にある闇に気付いた時、
いや気付いてしまった時の戸惑いは、知らぬ振りするしかないのだろうか。
【収録作品】
「汚い子」
「オステリア」
「酔いしれた歳月」
「アデーラの家」
「パブリートは小さな釘を打った」
「蜘蛛の巣」
「学年末」
「わたしたちにはぜんぜん肉がない」
「隣の中庭」
「黒い水の下」
「緑 赤 オレンジ」
「わたしたちが火の中で失くしたもの」