吉祥読本

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悪魔の薔薇 ::タニス・リー

読む前には想像していませんでしたが意外にも「剣と魔法」の世界が多くて驚きました。
ファンタジックかつブラックな隠し味は絶妙ですが、読むのに苦労する作品もチラホラ。
文体に硬質な印象を受ける作品もあり翻訳者との相性の問題かもしれません。
(翻訳者は二人で分担しています)



「別離」
ヴァンパイアの女主人と執事の話で、ゴシックな雰囲気が漂います。
二人の出会いから長い長い年月が経ち、ついに別れの時を迎えるのですが
そこに新たな出会いを加えることで残酷さと美しさを感じます。
他の作品と比べると理解しやすいということもあり、最も好きなストーリーです。

 

「悪魔の薔薇」
旅先で出会った男女が出会い、恋に落ちるがその顛末は。。。。というホラーです。
さすが表題作になるだけあって黒い。このオチの怖さというか酷さはまさしく悪魔。
ただ、どこかでこれと同じようなオチというか設定があったような気がします。
著者自身が「わたしの作品のなかでもっとも恐ろしいもののひとつだ」と言ったとか。

 

「彼女は三(死の女神)」
三人の芸術家それぞれにとりつく死への姿を描いている。
本書で最も読むのに苦労したかも。世界幻想文学賞短編部門受賞作とのことだが
改めてこの賞とは相性が悪いのだろうか、と思わされた。

 

「美女は野獣」
これも苦労した作品。美女も見る人によっては野獣になるよって解釈でいいのいかな?

 

「魔女のふたりの恋人」「黄金変成」「愚者、悪者、そして賢者」「蜃気楼と女呪者」「青い壺の幽霊」は
大雑把過ぎるかもしれないが、いずれも「剣と魔法」の世界を描いているのでまとめちゃいますが、
アラビアンナイトっぽい。と思っていたらあとがきで「愚者、悪者、そして賢者」などは
モロに意識してたようです。
十把一絡げにしてしまうのは申し訳ないがこの「剣と魔法チーム(笑)」の中では
「愚者、悪者、そして賢者」が単純で予想通りでありながら面白かった。
(複雑なのが苦手ってことですね~)

 

文章が濃密で気を抜くと理解できず、何度か戻りながら読んだ作品もありつつも
硬軟織り交ぜた作品をそれなりに楽しめたと思います。

 

奇想コレクションも多彩ですなあ。