吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

20世紀の幽霊たち --ジョー・ヒル

奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣に座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。
四年前『オズの魔法使い』上映中に一九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊』)そのほか、ある朝突然昆虫に変身する男を描く『蝗の歌をきくがよい』、
段ボールでつくられた精密な要塞に迷い込まされる怪異を描く『自発的入院』など…。
デビュー作ながら驚異の才能を見せつけて評論家の激賞を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞の三冠を受賞した怪奇幻想短篇小説集。



今年中に読もうと思いながら積みっぱなしでしたがギリギリセーフです。
しかし、短篇集なのにボリューム満点で、読むのに苦労しました。
デビュー作でありながら全体を通して平均点は高いレベルを保っている気がします。
その中で面白かった作品を幾つかピックアップします。

 

●「年間ホラー傑作選」
 ホラー傑作選のアンソロジー編者がある著者に会いに行く。
 ようやく探し出した場所で編者を待っていた結末は、、、、
 ちょっと気色悪いがイメージが湧きやすく、この短篇集のなかでも解りやすい展開です。

 

●「ポップ・アート」
 いいですね、この作品。風船人間との交流が描かれるがそんな変な設定にも関わらず
 ほろりとさせる著者の手腕はなかなかのもの。

 

●「蝗の歌をきくがよい」
 ある朝起きたら蝗(いなご)になっていた男の話。まるでカフカの変身のようだが、
 この男に悩みは感じられない。単純な行動力を見せつけるイナゴ男の潔さが好きかも。

 

●「末期の吐息」
 この作品がいちばん好みかも。様々な「末期の吐息」を展示している博物館という設定がいい。
 ポーの吐息には興味がある(笑)
 ラストはありがちなオチだなあ、と思いながらも変な方向に持っていくよりはしっくりして良かった。

 

●「死樹」
 樹木の幽霊を題材にしたショートショート。3ページにも満たない作品ですが、
 なんとも美しく、好きだなあこの雰囲気。
 その気になれば長い感想が書けるが、そんなことをしたら、作品そのものより長くなるのでやめときます。



これ以外の作品では、「アブラハムの息子たち」「マント」「うちよりここのほうが」
「おとうさんの仮面」などが良かったです。作品のバリエーションの多さには驚かされます。

 

ページ数が多いので時間がかかった、とも言えるけど、実際には一作品読むと
次をすぐ読む気になれませんでした。
気分にあわせて読むと今月中に読めないぞ、と思い無理やり読んだのですが、
多分自分のペースでは二ヶ月位かけて読むと全ての作品がじっくりと楽しめたような気がします。

 

好き嫌いは別にして、ピックアップした五作品だけ読んでもジョー・ヒルのセンスには光るものを
感じることでしょう。
いつか、とんでもない作品を書いてくれるような予感がします。