吉祥読本

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入門 山頭火

著者:町田康
出版社:春陽堂書店

 

勿論の事、山頭火は名前しか知らないが町田さんが解説してくれるならと入門。

実はご自身も知らなかったらしく

「物書きの看板を上げておきながら山頭火も知らないでどうする。

世の中をなめているのか。殺すぞ」

と言われたことがきっかけだとか。

町田さんなりの解釈と考察の語りはまさしく入門と呼ぶにふさわしく、

そのうえいつもながらの町田節が楽しい。

「まつすぐな道でさみしい」

「どうしようもないわたしが歩いている」

「分け入つても分け入つても青い山」

など山頭火の自由律俳句は一見自分でも書けそうな気になるが、

実際に考えてみると陳腐で世の中をなめてるのですかと詰められそうなので断念。

生き様や人間関係など厳しいバックボーンがあるからこその深い言葉なのだ。

例えそれが自業自得であったとしても。


母親や弟の死からの影響は同情するが、

酒に溺れ、行乞に逃避し、友人や家族への迷惑たるや如何ほどか。

にも拘わらずサポートしてくれる人たちがいたのだから結構魅力のある人なのだろう。

何事も極限まで突き詰めないと後世に残る作品はできないということか。

半端者には決して理解できない世界なんだろうと思うも、

羨ましくない生き方であることも確かなのです。

兎にも角にも町田さんのおかげで山頭火の概要が知れたことに感謝します。