吉祥読本

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たまご猫 ::皆川博子

短編集だが、ほとんどの作品で共通しているのが生きている人と死んでいる人の区別がつかないこと。
ホラーとも言い切れないところが皆川作品らしくもあるのか。解説の東雅夫氏は幽霊小説としています(笑)
「蝶」のように人間の深淵を描いていることは共通しているが、そこに死者が普通に存在しているだけ、
と、あっさり書いてしまうのも何だが。。。

 

「蝶」ほどの完成度は感じられないし、古臭さも否めないが
印象的な作品としては「をぐり」「春の滅び」「おもいで・ララバイ」「骨董屋」あたり。

 

「をぐり」
 歌舞伎の「小栗判官」の下敷きとなる浄瑠璃「をぐり」が組み込まれた内容のようだが
 うまくまとめられない。
 が、女性の持つ複雑な心理や妖しさが綺麗に表現されている。。。気がする。
 わかってないくせに、、、いい。

 

「春の滅び」
 雛人形というアイテムを使って主人公の女性、その叔母の人生をなぞらえているかのようだが
 狂気じみていく結末にやるせなさを感じる。

 

「おもいで・ララバイ」
 子供の頃に誘拐された経験を持つ女性が大人になって訪れた旅先で偶然、
 誘拐されていた家を見つけてしまう。
 子供の頃の記憶と現実の接点が徐々に見えてきたときに訪れる誤算。

 

「骨董屋」
 知らない土地で偶然入った骨董屋は主人公の子供の頃を知っている姉弟が経営していた。
 主人公に記憶はない。
 理由のわからない彼らの悪意が薄気味悪いが、徐々に過去の出来事が明らかに、、、



皆川作品には「骨」の出てくることが多い。
骨で細工したものなどがでてくるとやはり薄気味悪い。
なぜそこに固執するのかちょっと知りたいような、知らないほうがいいような。
女性の持つ、ひとことでは言えない蒼白さを含んだような情念が、男にとってはジワリと怖い。



作品リスト
「たまご猫」/「をぐり」/「厨子王」/「春の滅び」/「朱の檻」/「おもいで・ララバイ」
/「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」/「雪物語」/「水の館」/「骨董屋」 10篇。