吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ゆめこ縮緬

著者:皆川博子
出版社:KADOKAWA

 

大正、昭和初期を舞台に耽美で妖しい世界を浮かび上がらせる8編はいずれも濃密な匂いが漂う。
ほとんどの作品で1行目を読んだ途端引き込まれる確率の高さには参る。
馴染みの薄い古い言葉が妙に心地よく、その場で自分が息をひそめながら成り行きを見守っているような臨場感と夢の中のような茫洋としたあやふやさに落ち着かない。
女性の情念、闇、血の匂いにゾクリとしながらあちらとこちらの世界を行ったり来たり翻弄され漂う。
どの作品も良いが「文月の使者」「桔梗闇」「玉虫抄」が特に。


このたび復刊した文庫。

皆川文学の真骨頂。これ以上語るほどの語彙の持ち合わせがありません。

「文月の使者」「影つづれ」「桔梗闇」「花溶け」
「玉虫抄」「胡蝶塚」「青火童女」「ゆめこ縮緬


2019/10/7読了