吉祥読本

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統ばる島 /池上永一

竹富島」「波照間島」「小浜島」「新城島」「西表島」「黒島」「与那国島」「石垣島
八重山諸島にある八つ島を舞台にした物語。

 

それぞれの話は独立していて短編集の体裁だが、実はちゃんとひとつなぎになっている。
それぞれのテイストは違うが「バガージマヌパナス」のような印象です。
相変わらず言葉が外国語のように難しいが、ある程度リズムを掴むと読むスピードが上がってきます。
伝承と現代の混合具合が不思議な雰囲気を作り出しています。

 

厳しい自然と生活、という現実がありながらあっけらかんとしている登場人物たちが吐露する言葉は
時に共感できるが、沖縄ならばなんとかなるだろうと気軽にやってくる本土の人たちに向ける
冷めた目にはドキリとする。

 

不思議な伝承に彩られる島々の物語は決して伝説ではなく、現代にも続いている。
勿論暮らさないとわからないだろうが、きっとこんな不思議な事があってもおかしくないんだろうなあと
自然と思える。
小浜島」で出てきた一族のように、寄り添いながら細々と続くバトンの受け渡しが、
とても大事なものなんだと思う。
与那国島」の元女海賊のような力強さも、「竹富島」の踊りも、「黒島」の新任教師のような
外部の力の導入も、小さな島でありながらみんなまるごと受け入れることができる度量と、
優しさに裏打ちされた厳しさを併せ持つ八重山諸島の人々と風土の魅力が
心地よい読後感を与えてくれたのだと思う。
なるほど「統ばる島」とはピッタリの題名だ。
ちなみに「統ばる」とは、集まって一つになる、という意味。

 

積みっ放しの「風車祭」はこの作品と同様のテイストなのでは?と勝手に思っているので
そろそろ棚卸ししたいのですがボリュームがあるので躊躇しております。