吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

チョッキー /ジョン・ウィンダム

イギリスを舞台にした四人家族に起こった不思議なできごとを描きます。
養子として引き取られたマシュー(12歳)が主人公のジュブナイルっぽいSFで、
全体的に緩~く物語は進行します。
ある日、マシューの様子がおかしいことに気付いた両親は悩みます。
幻覚でも見ているかのように独り言、というか姿が見えない相手と会話をしていたり
習った事もない難しい理論を少ない語彙で語ったり、泳げないのに妹を急流から救ったり
不思議な味わいのある絵を描いたり。。。。
マシューに訪ねても「チョッキー」という名の存在を示唆するだけで要領を得ない。

 

簡単に言ってしまえば映画「E.T」のように、地球外生命と少年の交流を描いています。
姿は誰にも見えませんが。
両親は「チョッキー」を、マシューが勝手に作り出した妄想として考えるために
子供とのコミュニケーションに悩みます。
本作はSFではありますが人間の内面的なものにかなりのページが割かれます。
「家族愛」といえば陳腐でしょうか。

 

母親が子供のために取り乱し必死になっている姿、冷静に妻や子供を理解しようとする夫の姿が
目に浮かぶようです。
徐々に自分の子供に起きている事態を理解していく(理解しようとする)姿を描くことを
主題としているかのよう。

 

月日が経って振り返ると、「そういえばあんなこともあったね」と思うことが誰しもあるけれど、
「この時期」をそんな懐かしい気分で、この家族たちは回顧するのでしょう。
地味ではありますが、いい気分で読み終えた作品です。




 「進歩とは教師の教えによって生徒が教師を超えるときに生まれます」
 (本文より引用)