著者:酒井聡平
出版社:講談社
「硫黄島」における激戦で日本軍の守備隊2万3千人中、生還できた人は約千人。
硫黄島の致死率は実に95%。
未だに1万人以上の遺骨が還れずにいる理由を調査する記者の熱意が伝わってくる。
遺骨の帰還事業に積極的に参加し、独自の調査により硫黄島の知られざる歴史や
現在に至る問題点が浮かび上がる。
日米どちらの国にとっても重要な意味を持つ小さい島である「硫黄島」。
戦中の様子、戦後の島の役割、返還後でも進まない遺骨の帰還事業のことなど
知らないことばかりだったので大変勉強になった。
本書で言及されている厚労省や防衛省のメンタリティに関してはモヤモヤするし、
以前読んだ「黒い海 船は突然、深海へ消えた」でも言及されている
日米関係の問題点が本書でも提示される。
取り敢えず自衛隊の管轄になっているが日米の重要軍事拠点でもある島には
一般人は基本上陸できない。
そしてその間にも硫黄島のことを知る人は減っている。
風化してしまわぬようギリギリのタイミングで出版された本書の果たす役割は大きい。
米軍が波止場を作るために沈められた船が隆起によって
姿を現している写真が印象に残った。
(ネットの地図で硫黄島を見ると沈船も容易に確認できる)
能登の地震で隆起した海岸線同様、自然の力の大きさに圧倒される。
自然の力と国家の力に負けないよう帰還事業が進むと良いのだが。
地図を俯瞰すると、こんな小さな島の地下で多くの人が戦っていたことに
胸が痛みます。