著者:佐藤究
出版社:河出書房新社
戦闘機に魅了された少年は一途に夢を追い求め、
護国、仏教などに関する思考を重ねつつ、戦闘機への自分の気持ちに逆らわず、
冷静かつ忠実に行動する様は終始展開が読めないまま進行する。
虚無感を纏う主人公と文体から伝わる緊張感は最後まで持続され、
読後、ブルーバックとGをかけたような題名が融合しようとしているように見える
表紙を眺めながらしばらく余韻に浸っていた。
「テスカトリポカ」のようなハードな描写は無いが無機質な文体でありながら
青白い熱が伝わって来た。
あとがきには三島由紀夫をモチーフにした、とある。
「豊饒の海」を意識していたようだが、残念ながら読んでいない。
読んでいれば「易永透」という名前にも反応できたかもしれないし、
もっと深く楽しめたかもしれない。
子供の頃、パイロットになりたいと漠然と思っていて、
少ない小遣いから航空関連の月刊誌を購入していた身としては
ワクワクする内容でもあった。
相変わらず多い参考文献を血肉としてリアリティを持たせる作品を作り上げる
佐藤究から今後も目を離せない。