著者:松本俊彦
出版社:みすず書房
薬物依存症と向き合い続けてきた精神科医による、自身の来歴や依存症患者との
数々の葛藤が率直に書かれている。
医師であれ、患者であれ、向き合った人ではないと到達できないような考え方や苦悩が伝わってくる。
薬物の依存症に関しては基本的に個人的な問題と責任だと思っていたし、
病気という観点から考えることはほぼ無かったので勉強になる。
実はアルコールが一番やっかいという見解には愛飲家としてはドキリとする。
人間にとって薬は必要なものだが、使い方如何で良し悪しを判断しなければいけない
曖昧な存在でもある。
薬物の禁止に重点を置いても撲滅ができない現実があるのも事実で、
結局のところ依存症を病気として捉え、どのように治療していくかのも
重点を置かないといけないのだろう。
著者の言うように依存症の人には「ヤメロ」だけではなく、
「孤立させない、誰かに頼れるような仕組み」こそが必要であり、
医者だけに任せるだけではなく、自分も考えを改める必要があるのだろう。
いつ自分が何らか(アルコールとかね)の依存症になったり、
対峙する事態になる可能性があるのだから。