吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2017年7月の読書リスト

最近の天候は色々な意味で凄いです。例年、できるだけエアコンを使わないようにしてきましたが、今年はかなりの割り合いで使っています。除湿しか使わないのですが、あまり効果がありません。
熱中症にならないように気を付ける日々が続いていますが、
災害で大変な人たちに比べれば弱音を吐いてる場合じゃないですね。



 2017/7/6読了
 ::盤上の夜
 宮内悠介
 「それでも、二人の棋士は、氷壁で出会うんだよ」
 「おれは、オブジェクト指向で作られた修羅だ」
  短編ながらその背景に膨大な情報が詰め込まれ、長編を読んだかのような心地良い
 疲れを覚える。
 囲碁、将棋、麻雀等、様々な盤上で繰り広げられる濃密な世界に魅せられる。
 知識が無くてもその深淵や宇宙や深海を目指す人々の熱量や切なさが伝わってくる。 素晴らしい。



 2017/7/12読了
 /猿神のロスト・シティ―地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ
 ダグラス・プレストン
 近年、最新技術により発見されたホンジュラスの失われた都市探索の記録だが、
 探索自体に重点を置かれているわけではなく、探索前後の話しや、探索に関わる
 多様な人物たち、不安定なホンジュラスの状況にも多くのページが割かれている。
 特に探索終了後の感染症に罹患した著者を含むメンバー達の状況からヨーロッパの
 行ってきた侵略、
 そしてそれに伴う感染症の広がりに関する考察は興味深かった。
 が、やはり野次馬的に失われた文明に関する情報がもっと読みたかった。
 それはもっと後になってしまうのは理解できるのだが。。



 2017/7/16読了
 /信長嫌い
 天野純
 天野さんは決戦!シリーズの短編しか読んだことが無いが、本作も信長周辺の
 人物たちを描く短編集だった。
 いずれの作品にも信長自身はほぼ出てこない。
 最近この手の視点で描かれる作品が多いのでそれ自体はいいがどこか既読感のある
 作品が多かったのが残念。
 目新しさが無いというのか。
 その中で、年老いた忍びを描く「丹波の悔恨」がユーモラスで面白かった。
 女忍だった奥さん、お梅がいい味を出していた。舞台は「忍びの国」(未読)と
 同じなのかな。
 がっつりとした長編を読んでみたい作家さんではあります。



 2017/7/23読了
 ::堆塵館 (アイアマンガー三部作1)
 エドワード・ケアリー
 個性的な一族の「物」に拘る人々を描く群像劇。
 堆塵館という一つの街を内包しているかのような屋敷(駅まである!)で
 繰り広げられる不思議な会話や事象はファンタジックで今までの作品の中では
 分かり易い内容だった。
 と思ったら十代の少年少女向けらしい。
 子供にわかるのかな?と思うが柔軟性がある時期には楽しめるのかもしれません。
 確かにすっかり固くなった脳ミソなりに映像を浮かべながら読んでいたが、
 ティム・バートン的な映像だったし。次作が楽しみ。

 

 
 2017/7/27読了
 ::ヨハネスブルグの天使たち
 宮内悠介
 南アフリカ、ニューヨーク、アフガンなどを舞台に、少女型ロボットDX9を絡ませた
 連作短編集。
 やはり伊藤計劃の作品を読んでいるかのような感覚に囚われ、
 不謹慎にも「屍者の帝国」を宮内悠介が引き継いでいたらどんな作品に
 なったのだろうとすら思ってしまった。
 繰り返されるDX9の落下は切なく、虚無感と静謐な美しさを感じる。
 いずれの作品も状況を掴み辛いが、心に響いてくるものばかり。
 「北東京の子供たち」のラストシーンにジワリ。



 2017/7/30読了
 ::AX アックス
 伊坂幸太郎
 いきなり檸檬と蜜柑の名が!懐かしい名前が次々と出てきて懐かしさ全開。
 そして殺し屋シリーズらしく、次々とあっさり人が死んでいきます。
 なのに重苦しさは無く、殺し屋の顔と恐妻家の顔の妙が楽しめ、そして昔から
 何度も描かれてきた父と息子の心温まるストーリーにほのぼのとしてしまう。
 いつも通り伏線の回収もお見事。
 嫌なキャラの結末は予測通りだったがそれを上回る展開にやられることの嬉しさ。
 これぞ伊坂さん。
 更にラスト4ページでとてもいい気持にさせてもらえる作品でした。



6冊読了。