吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

夜更けのエントロピー --ダン・シモンズ

今年の年度末は何時にも増して忙しく、3月は休みを一日も取れませんでしたとさ。
花粉症も相まってグダグダなんですがこんな時にこの作品を読んだのはきつかった。。。
いや忙しいのは贅沢な悩みかもしれませんけどね。。。今週こそ休みがとれるといいな。
はあ、ダメっすか。そうっすか。

短編なんでいつものように間を空けながらゆっくりと読んだのですが、
なかなか進まなかったというのが本音。
「黄泉の川が逆流する」「ベトナムランド優待券」「ドラキュラの子供たち」「夜更けのエントロピー
「ケリー・ダールを探して」「最後のクラス写真」「バンコクに死す」の7編です。

この中で一番印象的なのが「最後のクラス写真」。これはぐいっと引き込まれました。
細かい説明が無いので一体どんな状況なんだ?ととまどうが、読み進めるとなんてことだ!?と
唖然とする。
簡単に言うとゾンビものだが、未来は暗いのに変に光が差してきた感じがして、
それでいて何とも切ない気分にさせられる読後感。
作者は以前教師経験があるらしいが、それが生かされた話なのだろうか?
いやそもそもこんな発想、浮かぶものだろうか。。。。ああ、だから奇想なのか。
「ケリー・ダールを探して」も同様。教師の時に一体何を考えていたんだろうねえ。

ベトナムランド優待券」は筒井康隆氏の「ベトナム観光公社」を思い起こさせる作品でした。
訳者もあとがきにその点に触れていて、あながち間違った感触ではなかったようです。
バンコクに死す」とともに戦争の影響が与えた物語でしょう。
「ドラキュラの子供たち」はルーマニアチャウシェスクが残した傷跡と
ドラキュラが結びついた物語で、これにも政治の影響がうかがえ、
奇想でありながら作者の社会派としての一面が感じられる。

その他の作品にも共通するが、全体的に薄暗さと哀しさを感じるさせるものが多い。
このなんだか憂鬱な雰囲気が今のようにグダグダの時にはボディーブローのように効いて来る。
読む時期を選ぶ作品でもあったとさ。