吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

幼年期の終り --アーサー・C・クラーク

異星人の宇宙船が地球の主要都市上空に停滞してから五十年。
その間、異星人は人類にその姿を見せることなく、見事に地球管理を行なった。だが、多くの謎があった。
宇宙人の真の目的は? 人類の未来は?――巨匠が異星人とのファースト・コンタクトによって
新たな道を歩みはじめる人類の姿を描きあげた傑作!
ハヤカワ・オンラインより引用)



再読ですが、改めてとても楽しめました。



小学生の高学年の頃だったと記憶しています。
唐突ですが、そのころ見た夢の話です。

 



大きな部屋に一畳くらいの大きさで、大人の胸くらいの高さの水槽らしきものがぽつんと置いてあります。
水槽の中は濃紺で、チカチカ光る塵みたいなものがいっぱいあります。
白衣を着た男が顕微鏡みたいなものを覗きながら水槽の上から長い針を差し込むのが見えます。

 

夢の視点は切り替わり、自分はボンヤリと晴れた空を眺めていました。
突然、金属でできた丸太みたいなものが空から現れ地面にそれが刺さりました。
地面がグラグラ揺れます。

 

大きな部屋に切り替わります。
その水槽に近寄ると、そこにある塵は星であり、銀河系であり、ああ宇宙が詰まってる!
とビックリしたところで目が覚めました。

 

中学生か高校生か、それくらいの時期に「幼年期の終わり」を読んだ時、
イデア、世界観に圧倒されながらも、自分が見た夢をまざまざと思い出しました。

 

宇宙って何だろう、と考えた事のある人は多いと思います。
宇宙はどれ位広いんだろう、星はどれ位存在するんだろう、宇宙人はいるのか?など、
夢で見た箱庭みたいな宇宙、人間の細胞の中に存在しているかもしれない宇宙、とか
空想する事はたくさんありました。

 

今回はそんな記憶を改めて思い出したと共に、当時はショッキングな事象にばかり目を向けていたため
あまりピンとこなかった人間の存在意義とか真理とでもいうのでしょうか、
かなり深いところに目を向けることができました。
人類はペニシリンを採取するためのカビみたいなもので、大きな視点で見るとただの菌類でしかなく、
より大きな存在のために培養されているだけかもな、なんてことを考えながら読みました。
ラストは改めて読んでも壮大であり、人類の一員としては受け入れがたい結論ではありますが、
その場で地球の辿る運命を見届けたい思いにも囚われました。

 

初読時は小難しく感じるところもあった作品でしたが、今読むとても読みやすい作品だったんだなあ。。
そして自分の幼年期はとっくに終わっているんだなあ。(あたりまえか)
再読にもかかわらずドキドキさせられ、一気に読ませてしまう作品の力は圧巻です。
知識量、想像力共に優れているだけではなく、それをここまでわかりやすく書いてくれていたクラークの
素晴らしさを思い知らされました。
やはりこの作品が名作中の名作であることは、間違いないでしょう。