吉祥読本

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2001年宇宙の旅 --アーサー・C・クラーク

三百万年前の地球に出現した謎の石板は、原始的な道具も知らないヒトザルたちに何をしたのか。
月面で発見された同種の石板は、人類に何を意味しているのか。宇宙船ディスカバリー号のコンピュータ、
ハル9000はなぜ人類に反乱を起こしたのか。
唯一の生存者ボーマンはどこに行き、何に出会い、何に変貌したのか…。
SF史上に燦然と輝く記念碑的傑作に、作者クラークの新版序文を付した完全決定版。
(裏表紙より抜粋)


映画は何度も観ましたが、原作は読んでいなかったので、このまま来年にかけて宇宙の旅です。
映画館でリバイバル上映を観たのは随分前でした。
一回目は理解が出来ず、映画館に居座って立て続けにもう一回観ました。
トータル五時間越えの映画鑑賞はきつかったけれど、大きなスクリーンで観ておいたのは
今となっては良かったと思います。
その後もビデオを何度か観ましたが、自分なりに解釈はできているつもりでありながら、
なんとなく理解しきれていない感覚もある作品でした。

 

原作と映画の関係は訳者(伊藤典夫氏)のあとがきに的確な逸話があるので以下に引用します。

 

「クラークはクーブリックにレイプされたのだ」
SF作家レイ・ブラッドベリは試写のあと、映像の美しさを認めながらも、そう慨嘆したという。
その話を人づてに聞き、クラーク答えていわく----「それはちがう。レイプはおたがいさまだったよ」

 

では小説の感想を。
テーマとしては「幼年期の終り」と同様であり、個人的には「幼年期の終り」のほうが面白いと思う。
小説と映画は当然のことながら設定が違うところがいくつかある。
しかし、セリフが非常に少ない映画のわかりにくいところを補完してくいる役割を果たしてくれたため、
いくつかの引っ掛かりが納得できた。
また、映像を先に観ていたため、とてもスムーズにイメージが涌いて楽しめました。
それにしてもまるで宇宙船に乗って実際に星々をみたのではないかと思うような描写はすごいです。
映画のラストの難解さは多くの人が感じたのではないかと予測できますが、
そのラストを見事なまでにテキストで表現しきっていることにも驚きました。
勿論、それでもなんとな~く理解仕切れているわけではないですが。。。(笑)

 

序文は「楽園の日々」と同様、クラークらしさが溢れていて楽しいオマケでした。
また、多分世界で最も有名だと思われるコンピューター、「HAL」の名前の由来に関しては、
ここには書きませんが自分も訳者の意見を支持します。



その後の映画やSF小説に与えた影響がいかに大きかったかは多くの人が実感されていることでしょう。
自分もかつて映像の編集をしていたころ、近未来っぽい映像を表現するためにBGMとして
ツァラトゥストラはかく語りき」を利用したことがあります。
宇宙の荘厳さを表現する音楽で、これ以外の曲を思い浮かべるほうが難しいのではないでしょうか。

 

ビデオテープを持っているので改めて映画を観たいのですが、デッキが虫の息なのが残念です。
とりあえず来年一月中に「2010年宇宙の旅」を読む予定です。