吉祥読本

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ガストン・ルルーの恐怖夜話 --ガストン・ルルー

「黄色い部屋の謎」、「黒衣婦人の香り」などでおなじみのフランス・ミステリ界を代表する巨匠
ガストン・ルルーが贈る世にも怪奇な短編集。片腕の老船長が語る奇怪な話「胸像たちの晩餐」、
コルシカの復讐譚に題材をとった「ビロードの首飾りの女」、結婚相手が次々と怪死を遂げる娘の物語
「ノトランプ」をはじめとして、いずれ劣らずなまなましく人間心理の闇を描いて、
読む者を戦慄の世界へと誘う。恐怖小説ファン必読の傑作集!
(本書より引用)



「金の斧」 「胸像たちの晩餐」 「ビロードの首飾りの女」 「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」
「ノトランプ」 「恐怖の館」 「火の文字」 「蝋人形館」 の8つの短編が収録されています。



全体的に古臭く(実際古いんですけど)、懐かしい雰囲気が漂う短編集でした。
全部ではないが船乗りたちが百物語のように体験談を語るという体裁。
霊的なものというより心理的な怖さを描いていますね。
いずれの作品も短編なので当然だが冗長なところが無く、読んでいる者の想像力をうまく利用していると思う。
薄っすらと結末がわかるものもあるが、それでも巧いなあ、と素直に感じてしまう。
後味が悪いもの、グロくて気持ち悪いものが半数を占めるがあくまでイメージ的な怖さであり、
さほど直截的ではない。
これらのなかでは「金の斧」「胸像たちの晩餐」「蝋人形館」が印象的な作品でした。

 

「金の斧」
湖畔の小さな村に逗留している時に出会った老婦人に、斧を象った金製のブローチをプレゼントします。
しかし、そのプレゼントを見た老婦人は震えだし、そのプレゼントを湖に投げ捨ててしまう。
老婦人は、その理由を語りだす。・・・なるほどそんな真相が、と思うと共に状況こそ違うが誰しもが
持ち得る心理的な怖さでした。

 

「胸像たちの晩餐」
船長が持っていた別荘の隣にある空き家の別荘から、ある日とても騒がしい音がするので様子を伺うと
夜明け近くにドアがあき、夜会の衣装を着た女が誰かを送り出す声がする。しかし、送り出した人物が
見えない。
次の年、どうしてもその夜会が気になり探りをいれるが・・・・
片腕の船長が語る、というところが巧い。イメージ的には一番嫌な気持ちにさせられました。

 

「蝋人形館」
四人の若者が肝試しを思いつき、いくつかの候補地を検討するうち、蝋人形館でやろう!ということに。
その中の一人が蝋人形館で一晩を過ごすことになるのだが、暗闇で首だけの蝋人形が動き出して・・・
顛末はわかりやすいし、ありがちなオチです。でも実際にこの状況にいたら怖いっす。



「ビロードの首飾りの女」「蝋人形館」は昔々に読んだ記憶が。。。
いつ読んだんだろう?
自分の記憶力の無さが一番怖い。。。