18世紀の古きロンドンを舞台にしたミステリー作品です。
外科医をしながら私的解剖教室を開くダニエル・バートンとその弟子たちの周辺で奇怪な事件が起きる。
容姿端麗なエドワード・ターナーや天才細密画家であるナイジェル・ハートら優秀な弟子たちがダニエルと共に墓暴きから屍骸を買い取り、医療発展のために解剖を行っているところから物語は始まる。
勿論入手経路としては違法であり、ウィストミンスター地区治安判事に所属する犯人逮捕係、通称ボウ・ストーリー・ランナーズの捜索が早々にやって来る。
妊娠していた女性の屍骸解剖を中断し、屍骸を特殊な仕掛けがある暖炉に隠した彼らは
捜査を乗り切った直後に遺骸が増えていることに気付く。
それも四肢を切断された男と顔を潰された男の二体！
治安判事のジョン・フィールディングと、助手であり姪のアンはバートンたちと共に
真相究明に乗り出すが。。。
やけに軽いノリの展開、会話は当初、ラノベなのか？と思わせたが、弟子たちや
当時のイギリスの町並や生活の様子などが魅力的に描かれ、すぐに引き込まれました。
自分たちの先生を守ろうとする弟子たち、目が見えないながら的確な捜査をする判事など真相に迫るパートと、事件の経過を描くパートを織り交ぜる。
時間軸の違う話が同時に展開しているが「伯林蝋人形館」ほどの複雑さは無く読みやすい。
物語りは二転三転を繰り返すのでめまぐるしいが、後半になるとあんな事も伏線だったのか！ と気付かされることもあり、伏線の張り方がうまいなあと感心しました。
物悲しい展開の中でどこかユーモラスで読後感も悪くない。
時代をうまく反映した題名もいいですね。
作中、弟子たちの唄う「解剖ソング」なるものはユーモラスな演出家と思いきや
実際に基になる歌があったらしくちょっとビックリ。
巻末には特別付録として皆川博子アレンジの「解剖ソング」の詩がすべて掲載されていて笑える。
果たしてどんなリズムなのか。
それほど読んでいないので判断できないが、皆川さんの長編はちょっと躊躇する。
実際、躊躇したままの作品がウチには眠っている。
しかし、この作品はとても読みやすいと思うので、躊躇している方にはおすすめの作品です。
