吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2018年1月の読書リスト

とにかく寒い。寒すぎる。
再読も悪くないと思える1月だった。それにしてもキナ臭い題名の作品が多いな~。
モリミーだけでは希釈できない感じ?



 2018/1/7読了
 /戦の国
 冲方丁
 最初の織田信長の作品に既読感があったので調べたら決戦!シリーズで全作
 読んでいることに気付く。
 ただ、面白い作品が多かったのは確かだし、再読したい作品もあったので継続すると
 決戦!シリーズとは違い同じ作家であることで文体に統一感があり、なおかつ題材が
 違うのに長編を読んでいるかのような印象を受けた。
 結果、むしろ再読して良かった。



 2018/1/7読了
 ::鎖と罠 - 皆川博子傑作短篇集
 皆川博子
 初期の短編集だけあって当然時代は感じさせるが、人間の心の奥に潜む残酷さ、
 長きに渡る怨念(愛?)と狂気が不穏に描かれているあたり、さすが皆川博子
 その中にあって「疫病船」の絶望感と「聖夜」に出てくる伯母への嫌悪感が
 いつまでも纏わりついてくる感じで印象的。



 2018/1/9読了
 ::太陽と乙女
 森見登美彦
 様々な媒体で発表されていた文章たちを集めたエッセイ集。
 11月末からモリミーが推奨している通り、眠る前に少しだけ読んでは閉じを
 繰り返し、ようやく読み終わりました。
 今までの作品の裏話や苦悩だけではなく、父親や奥様との微笑ましい関係など
 モリミーの色々な顔が垣間見え、共感したり小さく驚いたりとモリミーらしさを
 存分に感じさせてくれ楽しめました。



 2018/1/12読了
 /決戦!賤ヶ岳
 天野純希/矢野隆/吉川永青/乾緑郎土橋章宏/木下昌輝/簑輪諒
 賤ヶ岳の戦い自体を描いているわけではなく、秀吉側の「賤ヶ岳七本槍」と呼ばれた
 武将たちを描いている。
 加藤清正福島正則のように有名どころは浮かぶが、案外浮かばない武将の方が
 多いことに気づかされました。
 脇坂安治は知ってる気がするなあと思っていたら、関ヶ原で裏切った人でしたね。
 ちょっと憐れな感じもするもコミカルに描かれている作品もあり、それぞれの
 人間関係は地味に面白かった。
 ただ、柴田側の目線も欲しかったかな。
 特に拝郷家嘉の目線でどなたか書いてくれませんかねえ。



 2018/1/18読了
 /中国はなぜ軍拡を続けるのか
 阿南友亮
 題名から、アメリカとの覇権争いに勝つためだろ?と思っていただけだったが、
 読むとむしろ国内問題の方が大きな理由になっているようだ。
 共産党既得権益を守るため、民主化を求める国民を抑え込むため、民主化
 理由にした西側諸国の干渉を阻止するため等々あからさまに共産党を守るために
 人民解放軍という
 皮肉な名前を持つ軍隊(党軍)を強化している。
 中国というシステムに蔓延る齟齬が冷静に整然と提示されていて分かり易い。
 これら基本的な流れを知ったうえで中国とどのように付き合うべきか、
 そして対処していくべきか考察する必要がある。



 2018/1/22読了
 /火定
 澤田瞳子
 天平の時代、奈良を襲った天然痘の脅威と、様々な人間模様が描かれる力作。
 天然痘が徐々に都に蔓延しはじめ、原因も治療法もない中でひたすら対応する
 施薬院の面々の奮闘だけではなく、逃げ出す者もいれば意味のない宗教に頼る者、
 この機に乗じて金儲けに走る者など人の心の中にある清濁が炙り出される。
 老若男女、地位など関係なく襲い掛かる天然痘の猛威の様がグロテスクで容赦ない。
 しかし目を背けたくなる描写が多いにもかかわらず、それでも読まずにいられない。
 そして読めて良かったと思える作品だった。



 2018/1/30読了
 ::とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
 ジョイス・キャロル・オーツ
 文庫が出たので再読。いずれも人間の心の奥に潜む闇にヒリヒリさせられ、
 ダメだとわかっている方に結局吸い寄せられしまう人間の弱さに嘆息する。
 様々な悪夢に目を背けたくてもそれを許さないオーツの技巧はお見事。
 全くテイストの違う「化石の兄弟」と「頭の穴」がやはり再読しても印象的。



7冊読了。