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3001年終局への旅 --アーサー・C・クラーク

宇宙の旅もいよいよ終局へ。ついに3001年まで無事?到達いたしました。
最後の主役は「フランク・プール」2001年宇宙の旅ディスカバリー号に同乗していたボーマン船長の同僚であり、HALによって殺された宇宙飛行士である。
その彼がどうして主役かというと、実に一千年にわたって宇宙を漂っていた「フランク・プール」が回収され、そして蘇生する設定なのだ。
その手があったか!!

 

このシリーズの謎は、前シリーズまでを読んでいるとだいたい予想がつくが、この作品のプロローグで「魁種属」(さきがけしゅぞく)という存在を説明していて、それが答えでもある。
あっさりだな。

 

千年の眠りから醒めたフランク・プールの記憶は、当然ディスカバリー号の任務遂行中で途切れたまま。
彼はこの間に何があったかを徐々に、そして駆け足で知ることとなる。読者も然り。
一千年の間に起きたことだから駆け足は当然か。
宗教、戦争、テクノロジー、そして人間・・・
宗教は衰退し、地球の人間は平和に安住する。
地球から伸びる移動用のエレベータは宇宙へのアクセスを簡単にし、ロケットは意味がなくなっている。
宇宙の星々に進出し、宇宙で生まれた開拓者たちは地球人を軽蔑しているくらいだから
ただでさえアイデンティティの欠如している。フランク・プールの心情は複雑だろう。
実際、彼自身の扱いは人間と同じ姿をしているだけの千年前の英雄という名の珍獣と言ってもいい。

 

そんな立場のフランク・プールが、人類が立ち入りを禁じられているエウロパに向かうことは必然でもあったのだろう。
そこには姿を変えたボーマン船長やHALが「存在」し、人類の今後の鍵を握ってもいる。
やはりフランク・プールは複雑だ。自分のかつての同僚と、自分を殺した張本人を目指すのだから。。。

 

全体を通して大きな盛り上がりは欠けたまま、最終的に人類に対する「決断」は1千年の物理的猶予を与えられ、「終局への判断」を委ねたかたちで終わる。
盛り上がりに欠ける理由は3001年の科学的時代予測がリアルな故だからでしょう。クラークはやはり凄い。
終局への旅を「希望」とするのか「終末」とするかは、人間自身にかかっていたわけだ。



これでようやくシリーズを読了した。振り返ると2001、2010年は華やかな面白さでした。
シリーズの終わり方としては悪くない余韻を残していたと思います。
随分遠くまで来ましたが、これでようやく地球に帰れます。
スターチャイルドになれなかったのは残念だけど。。。