吉祥読本

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SOSの猿 --伊坂幸太郎

ひきこもり青年の「悪魔祓い」を頼まれた男と、一瞬にして三〇〇億円の損失を出した株誤発注事故の原因を調査する男。
そして、斉天大聖・孫悟空。救いの物語をつくるのは、彼ら……。著者最新長篇。
中央公論社Webサイトより引用)



「あるキング」で、ある意味新境地を開いた伊坂幸太郎が、少し以前の姿に戻ったうえで
新しい変化球でチャレンジしてきたような印象でした。
最悪のパターンを予測していたため、思っていた以上に楽しめてよかった~、って感じです。
個人的には「孔子孟子」にもう少しページを割いて欲しかったけど(笑)
今回はこの台詞がいいなあ、と言うのはなかったのですが、ニュアンスとして共感できる部分は
いくつかありました。



少しまわりくどい言い回しや会話の感じが伊坂らしい。
内容は悪魔祓いとか、西遊記とか、引きこもりとか、株取引の誤発注とかが絡み合って、
一体どこにどう繋がるのかという展開の仕方も「らしさ」が出ていたように思う。
最後にはお得意の収め方を見せてくれました。
とは言え、イメージが涌かない部分があって、完全にスッキリしたわけではない。

 

妄想めいた孫悟空の話を随所に絡ませているためだが、このあたりは五十嵐大介さんの
「SARU」というマンガとアイデアを共有した競作らしいので、そちらを読めばある程度
イメージできるのだろうか?
まさかとは思うが「SARU」を読まないと完全に理解できないなんて仕掛けじゃないだろうな、
と不安になる。「SARU」は来年発売らしいので、機会があれば読もうかなと思います。



ここのところの実験めいた作品の連続は、本人が小説だけで表現することに物足りなさを
感じているということなのでしょうか。
いや、一人では涌いてこないイマジネーションを得るため、新しい何かを生み出すために
コラボを楽しんでいるというのが正解か?。
まあ、本人がやりたいことがるのなら、それはそれで挑戦してもいいと思う。
新しいタイプの小説がそれで確立されるのであれば、もう少し待ちます。
でも、あまり立て続けに実験が続くと、ついていけなくなるかもしれないなあ。