吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

Story Seller 2

昨年読んだ雑誌「Story Seller」の第2弾です。
伊坂さん、近藤さん、佐藤さんが第1弾とリンクがあります。
ノンフィクションの沢木さんがどのような作品を持ってきたのか、興味ありつつ不安もありつつ読みました。


◆マリーとメアリー --沢木耕太郎

このメンバーの中に沢木さんは意外。
いや、ファンなんですけど、この7人の作品を読み終わった後でも意外さは変わらず。
話しの展開はうまいのですが、エッセイなんですよね~。
沢木さんの小説を積んだまま読んでなかったことを思い出したので、そっち読みます。


◆合コンの話 --伊坂耕太郎

久しぶりに読む伊坂作品は相変わらず軽妙でスタイリッシュです。
ご本人が意図したとおり、文体には実験の色が濃く出ていますね。
前回の「首折り男の周辺」よりは面白く読めました。前作とのリンクは何気に良い効果を生み出しています。
登場人物は今まで読んだ作品たちににも出てきた人物とは違いますが、似たようなタイプが多数あり。
「モダンタイムス」にも実験を感じたので、実験ではない作品をそろそろ読みたいです。



相変わらず「サクリファイス」を読んでいませんが、前作(「プロトンの中の孤独」)同様外伝です。
前回も楽しめましたが、これも単独で楽しめて好きですね。(外伝だけで楽しんでいいのか?)
前作とともに心象風景が反映されている題名のつけ方がしっくりしていて好きです。
サクリファイス」の文庫化、まだかなあ。


◆ヒトモドキ --有川浩

確かにキモチワルイ。
いやこの作品を読んだ編集さんの第一声が「超気持ち悪い!」だったとのことで、つい(笑)
近頃多いですね。ゴミ屋敷。たまに見かけます。
正式に病名を当てはめることによって「病気だから」と口実にしている人が多いのでは?
と思ったりもしますが、現実に病んでいる人もたくさんいるのでしょう。
現代病として無視することはできない存在になっているのでしょうね。
最初はホラーかと思いつつ、穏やかに無事軟着陸させた感じがします。
前回ほどのインパクトはありませんでしたが、今回も人間模様をよく描き出していたと思います。
弟の涙ぐましい水際作戦は長期間にわたっていて同情しますが、頼もしい男に成長もしたことでしょう。


◆リカーシブル─リブート --米澤穂信

長編ミステリ「リカーシブル」の冒頭部を短編にしたとのこと。
さりげなく超能力の話しっぽいけど、サトルとハルカが徐々に心を通わせていく終わりは微笑ましい。
前回もSFめいた設定がでてきたけど、いずれリンクしていくのか、それとも全く別物なのか。
あ、「リカーシブル」の短縮版だから関係ないか。
で、「リカーシブル」って、いつ出るんでしょう。文庫で(笑)


◆444のイッペン --佐藤友哉

前回の「333のテッペン」で、もう読まないでしょうと書きましたが、せっかく掲載されているのに
読み飛ばすのももったいないので読みました。
ところが全く期待しなかった事が功を奏したのでしょうか。
イベント会場から444匹の犬が姿を消してしまう事件が発生し、アルバイトに来ていた主人公の
「土江田」が巻き込まれます。
めでたく今度は判り易い展開。少しまわりくどい会話が気になったが慣れればどうってことない。
「土江田」の過去には何かしら大きな謎が隠されている事が示されているので、
このシリーズは続くと思われます。
とりあえず次回作を読もうかという姿勢になっているので、一歩近づくことができました。多分。
題名は「555のワッペン」とか?いやセッペン?ポッペン?う~ん何だろう(笑)


◆日曜日のヤドカリ --本多孝好

今回はこの作品が一番のお気に入りでした。
親子の会話が敬語で進みますが、この二人のスタンスがよく表現されています。
「子供にしては、・・・」と最初は思ったのですが、色々な事情がわかってくるととても良い味になります。
家族とは何かというのを大上段に構えて見せるのではなく、さりげなく大事なものを提示しています。
ラストの食卓での会話が暖かい気持ちにさせてくれました。
それにしても女の子に殴られた男の子、親を伴って現れるというのは今や当たり前なのでしょうか。
昔は親が行くと言ったとしても、恥ずかしくて絶対に阻止したはずです。
いやその前に子供同士の揉め事を親に相談なんかしなかったしな。時代なんでしょう。



今回のお気に入りは本多さん、有川さん、近藤さんというところでした。
この企画はとてもおいしいので今後も続けていただきたいものです。