吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

アメリカの鱒釣り ::リチャード・ブローティガン

二つの墓地のあいだを、墓場クリークが流れていた。いい鱒がたくさんいて、夏の日の葬送行列のようにゆるやかに流れていた。―涼やかで苦みのある笑いと、神話めいた深い静けさ。街に、自然に、そして歴史のただなかに、失われた“アメリカの鱒釣り”の姿を探す47の物語。大仰さを一切遠ざけた軽やかなことばで、まったく新しいアメリカ文学を打ちたてたブローティガンの最高傑作。(「BOOK」データベースより引用)



勿論この人の作品をわかったと言うつもりは毛頭ない。
注釈もいっぱいあるので、背景的な知識もそれだけ必要なんでしょう。
そのあたりの感想は、ピンチョンと同様です。
ま、ピンチョンとは作風が全く違うので比べることはできませんが(笑)でも不思議な事にブローティガンは面白いんだなあ。わからないのに面白いなんて、いい加減な奴と思われるかもしれませんが(いい加減なことは確かですけど)、それが面白いんだから仕方が無い。

 

印象に残ったのが「ワースウィック温泉」と「クリーヴランド建造物取壊し会社」。
「ワースウィック温泉」の気色悪さと、その中に抱えられた裏腹の明るさ、「クリーヴランド建造物取壊し会社」の喪失感と時代の変化による無常観や寂しさなど簡易な表現ながら何かを感じさせる力を感じました。
どこまで奇抜で突き抜けた発想と展開なんでしょう。



アメリカの鱒釣り」とは何か?
それを考えるのは読み手それぞれの自由でしょう。
何でもいいから読みながら思い当たる別の言葉を当てはめればいいのだと思います。
何も当てはめないで意表をついた言葉の連なりを楽しむのも良いでしょう。
深く考えてもいいし、全く考えなくてもいい。
まあ、明確に説明できないというのが最大の理由なんですが(笑)
でも普通の言葉の羅列なのに、いきなり心のどこかに突きささる感覚があるんです。
これは柴田元幸氏が書いてるように、訳者の藤本和子さんのセンスにもあるんだと思いますが。



柴田元幸氏が巻末で、本作品を読んだ時に 
 『小説を読んで「意味づけなくていいんだ」という開放感を味わった』
と書いていてなるほど、その通り!と思ったのだが、高橋源一郎を読んだ時の衝撃がまさにこれだった。
さすがにプロ!自分では言葉に出来なかった感覚を的確に表現してくれました。

 

ブローティガンは「マヨネーズ」という言葉で終わらせる作品を書きたかったらしいが、望みどおり本作は最後に「マヨネーズ」で終わっている。
変だけど、いいね(笑)