吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

スポンサーから一言 ::フレドリック・ブラウン

傑作集と重複する作品もありますが、何度読んでも面白いものは面白い。
いずれの作品もバラエティに富んだアイデアの塊です。
ショート・ショートはいずれもキレがいい。少し長めの作品も時代を感じさせることを省けば充分楽しめます。
よくあるパターンだな、とか前にもこんなオチがあったよ、なんて思ってはいけないでしょう。
多分ほとんどがフレドリック・ブラウンが原点でしょうからね。古臭いとかありがちとか今の時代に言ってはいけません。
ショート・ショートはどれも面白いですが、「血」が笑えて好きなオチでした。

 

ちょっと長めの作品もいくつかあります。全体的にはブラックな風刺が効いた作品が多い中、異色の作品「地獄の蜜月旅行」が印象的でした。
男子が産まれてこなくなる人類の危機的状況を描いた作品ですが、ハッピーエンドな読後感でした。
いつもならこの手のオチは好きではないのですが、素直に受け入れられました。

 

「スポンサーから一言」もこの中では少し長めの作品。
ある日世界中のラジオから同時刻に「スポンサー」と名乗るものからの通信が流される。
この発信者の正体とその意図は?というよりも、世界はどのように反応したかが描かれるが人の気持ちの機微みたいなものをよく表現しているなと思う。
やれと言えばやらないし、やるなといえばやりたくなる。誰もがみんな天邪鬼(笑)

 

最後を飾る「想像」は短いながらも印象的な詩のような作品だ。
ブラウンの創作活動の原点ともいえる思いを感じさせるような詩でした。

 

よい作品は時代を越えて、いつ読んでもいいものです。



以下、作品一覧

 

ヴードゥーの魔術」「歩哨」「最初のタイム・マシン」「あたりまえ」「実験」「血」「至福千年期」「効きすぎ」「立ち入るな」「武器」「選ばれた男」「ドーム」「鏡の間」「地獄の蜜月旅行」「最後の火星人」「鼠」「闘技場」「かくて神々は笑いき」「スポンサーから一言」「翼のざわめき」「想像」