吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

猫のパジャマ --レイ・ブラッドベリ

古書店で目が合いまして。。。何気に手に取ってよく見るとネコ耳が付いてるじゃありませんか!
表紙と裏表紙に大きなネコ目、そして耳が折りたたんであって表紙を広げると猫の顔に。
ついうっかりレジに。ちょっとショボいけど、帰ってから耳をピラピラ伸ばしたり折りたたんだり(笑)
でも裏表紙の目の上に値段シールがべったり貼ってあるのはいかがなものかと。



色々なタイプのブラッドベリがテンコ盛りです。新旧織り交ぜての短編は、概ね気軽に読めるが
深読みしようとすればいくらでも深読みできてしまう作品集でもあります。
気に入った作品をピックアップします。

 

・序文-ピンピンしているし、書いている
 最初を飾るのがこの序文。本来ならばあとがきでもいい文章だろうに、ここにもってきてしまうんだね。
 さあどうだ、というブラッドベリの皮肉めいた笑顔が浮かぶようだ。
 全部ではないが掲載作品のできるきっかけや時代背景等を自分で語っている。
 だから一作読む度に序文に戻って解説を読むと楽しめる。
 あ、だからこそこの文章を先頭に持ってきたんですね。なんだ親切じゃん!
 本人の解説なのだからこれ以上の解説は無いはずである。

 

・さなぎ(1946-1947年)
 人種問題を書いているのかなと思っていたら、、、人種を越えた少年の友情を描いている。
 なんだかまぶしくて読後感が良い。

 

・酋長万歳(2003-2004年)
 アメリカ合衆国上院議員がインディアンの酋長と賭けをして負け続け、 アメリカ全土をカタに
 取られてしまう話し。間抜け振りが笑え、風刺の効きぐあいが程よく好きです。

 

・趣味の問題(1958年)
 星新一作品を読んでいるかのようなSF。いや、こちらのほうが古いかな?
 いくら友好的であっても人間からみて異形な存在は友好の対象には成りえない。
 人間よりも心が広い異星人に、登場人物に変わって申し訳ないと思いつつ(笑)
 目の前にしたらやはりきついかもなあ。

 

・おれの敵はみんなくたばった(2003年)
 歳をとり、かつての友達や知り合いが減っていくのは寂しい、という話しを自分の親くらいの年代の人に
 聞かされることが増えた。
 ブラッドベリ自身の気持ちが出ていて、クスっとしてしてしまったり身につまされたり。
 いつか、それも遠くない将来、ブラッドベリと同じ心境になるのだろうか。。。

 

・エピローグ──R.B、G.K.C&G.B.S永遠なるオリエント急行(1996-1997年)
 実はこれ、小説ではなく、詩の体裁である。
 でもこの作品は最も面白いと思いました。
 ブラッドベリの気になる作家(例えばチェスタトン、ポオ、ディケンズ、トゥエイン)たちとの
 妄想の産物による交流を、 いくつかの作品の引用などを織り交ぜながら描かれる。
 本人曰く、子供の頃からいだいてきた図書館と作家たちへの完璧な愛を披露したとのこと。

 

表題の「猫のパジャマ」(2003年)は高速道路で同時に猫を見つけた男女が、自分の所有権を主張しあい、
その顛末を描く恋愛もの。予測できる展開だが、映画にすると恋愛映画好きな人には受けそうな気がします。
自分は、、、、まあいいか。



何を言ってるのか理解できない作品もありましたが(笑)概ね楽しめました。
昔書いた作品と最近書いた作品の年代的区別が付かなかったのはある意味凄い。
時代背景が色濃く出ている作品もあるにはあるが、長い間ブレのない作品を書いてきたことが窺い知れる。
現役のブラッドベリ、いつまでも書き続けてほしいものです。