吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

肩甲骨は翼のなごり --デイヴィッド・アーモンド

引っ越してきたばかりの家。古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。
ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。
アスピリンやテイクアウトの中華料理、虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。
誰も知らない不可思議な存在。彼はいったい何?
命の不思議と生の喜びに満ちた、素晴らしい物語。カーネギー賞ウィットブレッド賞受賞の傑作。
(裏表紙より引用)



書店で表紙を見かけるたびに気になっていたが、先日読んだ桜庭さんの本に出てきたのでついに購入。
上記の説明を読んだだけではホラーっぽいが、帯では宮崎駿氏絶賛、とある。
これは自動文学賞カーネギー賞ウィットブレッド賞の児童書部門を受賞している
れっきとした児童文学なのだ。



両親には黙ったまま、隣に住む少女ミナと共に「不可思議な彼」との交流をはじめるマイケル。
自分が子供だった頃、まだまだ色々なことが現実に存在するのではないかと思っていた頃
例えば鬼や天狗や妖怪、天使や妖精や諸々、子供の頃に読んだり聞かされたりした
不可思議な存在があると信じていた「あの頃」があったことを思い出させてくれる。

 

子供の時から親には内緒の世界があり、それを共有する仲間がいたっけ。
友達との距離が簡単なことで近くなり遠くなる煩わしさや焦燥感が自分の中で
大きな問題としてかなりの割合を占めていたっけ。
そして無限大の希望や未知への不安や期待を持っていたことを思い出させてくれる。
もちろんいっぱい大事なものを失ってしまったことにも気づいてしまうわけだが。

 

そんな作品だ。

 

何かを押し付けようとか、メッセージがあるとかではない。
誰もが経験したであろうある時期の出来事をそのまま切り取った感じだろうか。

 

桜庭作品と共通する世界観を感じる。
桜庭さんがこの作品を好きな気持ちが、すごくわかる気がする。

 

ガルシア・マルケスレイモンド・カーヴァーから影響を受けた作品でもあるらしい。
読む範囲を広げねば。
年齢を重ねても、まだまだ本を通してどんどん世界が広がる気がした。
まさしく「甘し糧(うましかて)」として気持ちよく読み終えることができた作品でした。