吉祥読本

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掃除婦のための手引き書  ルシア・ベルリン作品集

著者:ルシア・ベルリン
翻訳:岸本佐知子
出版社: 講談社
装幀:クラフト・エヴィング商會

 

現実なのか想像なのかいずれにしても到底浮かばない表現力、比喩力が凄い。
フォーカスされた状況を簡潔な文章で描き出しているがために理解できずにスルーしてしまうとより分からなくなるので読み返すことも多かったが、突然一言で何が起きているのかが分かったりする面白さ。
著者自身の経験が反映されていることがジワリとわかり、フィクションとノンフィクションの間を彷徨うことになる。

厳しい現実に対し飄々と乗り越えているように見えたり、
受け入れる強さや、諦観を滲ませたり、仄かな明るさを感じさせたり
それぞれの短編は様々な人間臭さを浮かび上がらせるが、
最後の一文で改めて現実を突きつける鋭さに驚かされる。
読み手が突き放されるという感覚もある。

表紙の写真は著者とのことだが、とても雰囲気があり、読み終わるとより味わい深く見える。
装幀はクラフト・エヴィング商會だし、翻訳は岸本さんだし、やっぱり文庫になったら買います。

岸本さんのあとがきで岸本さんのアンソロジー楽しい夜」にルシア・ベルリンも掲載されていたことを知った。
調べたら「火事」という作品で、初読み作家さんだと思っていたがすでに読んでいたんだな。
読んだ当時の感想では言及していなかったけど。。。
これからも岸本さんの翻訳本を楽しみにしたい。

 


2019/12/22読了