吉祥読本

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十二月の十日

著者:ジョージ・ソーンダーズ
翻訳:岸本佐知子
出版社:河出書房新社

 

状況が理解できず乗れなかったりする作品もあったが、
岸本さんの翻訳がノリに乗っているのはわかる。
各作品の登場人物たちは不器用すぎるというか共感しにくいというか、痛々しい。
いたたまれない現実の中で皮肉まみれで生きていくのは自分を守るためでもあるが
やはり痛々しさが伝わってくる。

状況が理解できてくると、どうにもならない格差の中でも足掻きながら生きていく登場人物たちの姿にちょっと温かい気持ちにさせられたり悪くない未来があるのかもね、
あるといいね、と思う。

これらの作品群の中で印象的なのは「スパイダーヘッドからの逃走」と
「センプリカ・ガール日記」。
やるせない気分になるのだけれど、どんなヤツにだって、
僅かであれプライドや良心を持つことは大事だし、
大切なものを守りたい気持ちはあるんだよなって、思いたい。


2020/3/2読了