吉祥読本

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ラウリ・クースクを探して

著者:宮内悠介 
出版社:朝日新聞出版

 

先日読んだ短編「国歌を作った男」が原型だったようなので早速読んだ。

いい作品ですね。


ソ連崩壊前のエストニアで生まれたラウリ・クースク。

プログラミングを通してできた親友のロシア人イヴァンと同じく

エストニアの独立を夢見るカーテャ。

そしてソ連の崩壊は3人の関係にも影響を及ぼす。

有名人でもなく社会情勢や選択できない環境にただただ翻弄されながら生きた

極めて普通の人間であるラウリ・クースクを探すジャーナリストの得る情報は

何を意味するのか。

また、ジャーナリストとは誰か。

淡々と進む静かな物語は所々自分の記憶を刺激し、

ごく普通の自分の物語でもあることに気付かされる。

読後に表紙をしばらく眺めながら改めて余韻に浸った。


読後に調べたらエストニアが本書に描かれるように、

電子国家の先端を走る国だったことに驚かされる。

本書で語られる「X-Road」は本当にあるのか。

ただ利権と売名のためでは?と疑わしい日本の政治家の戯言が恥ずかしい。