吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

歪み真珠

著者:山尾悠子
出版社:筑摩書房(ちくま文庫)

 

一切無駄のない濃縮された短編集に感想を述べるほどの適切な言葉がなかなか見つけられない自分が歯がゆい。
ある状況の断片を描いているだけで小説なのか?と思うものもあるが、著者の紡ぐ美しくて残酷で幻想的な世界観はそのイメージが湧くと途端に引き込まれ、余韻に浸れる。が、イメージが湧かないといくら読んでも冷たく撥ねつけられてしまう。
入り込むには集中力と想像力が必要だが、読後の疲労感が何とも心地よい。


「夢の遠近法」の記憶がまだ残っているうちに読んだので、「腸詰宇宙」絡みの作品「火の発見」は多分理解できたが、これだけ読んだら難しいだろうな。
あと「向日性について」は表向き滑稽にも見える状況がよくよく考えると非常に深い内容に思えてきて、凄い表現力だなと驚かされる。
「夜の宮殿の観光、女王との謁見つき」とかは内容もさることながら題名も面白い。
本書を先に読んでしまったが、積んでいる「飛ぶ孔雀」も体調のいい時に読まないと。


2019/5/8読了