吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

夜中に犬に起こった奇妙な事件 --マーク・ハッドン

今までこの手の本はあまり読んだことがないのですが、昨年書店でふとこの本と目があったので
手に取りました。
パラパラめくってみて、おっ読んでみるか、と思って購入してからはや数ヶ月。
やっと読みました。


「BOOK」データベースより引用
数学や物理では天才なのに、他人とうまくつきあえない自閉症の少年クリストファー。
ある夜、近所の飼い犬が殺された。彼は探偵となって犯人を捜しながら、事細かに記録を取る。
やがて驚くべき事実が明らかになり…事件を通して成長していく少年の心を描いた、
アルジャーノンに花束を』をしのぐ感動作。


何かこう、ストレートに綺麗な話しでした。
暗いストーリーを読んでいると気持ちがどんよりしてしまうのであまり読まないのですが、
これが暗いどころか爽やかで暖かで。

自閉症の少年が書いた小説という体裁をとっているので独特の文体の繰り返しなのですが、
慣れればどうってことない。
パラパラめくってから買った理由でもあるのだが、理系の頭を持つクリストファーは
文章中に絵や数式や相関図を書いて表現することも多く、
これがクリストファーの思考回路をよく表現していてわかり易い。
章立ても「1」から始まっていない。
あれ?って、章だけ追ってみると飛び飛びの数字になっている。。。
すぐに理由はわかるのですが、ナルホド理系です。


当たり前のことが当たり前ではないように感じるということがどんなことなのか、
何度もはっとさせられた。
駅で切符を買うことひとつとっても、冒険になるんだ。。。

実際に、クリストファーに質問をされたらきっとイライラするに違いない。
作品中に出てくる何人かの大人たちと同様、ふざけてるとしか思えないに違いない。
でも、今のようにインターネットの中で生活していると
必要以上にあふれている情報の中にうずまっている自分だって、
クリストファーとさして変わらないんじゃないか?
あ~、クリストファーは俺の鏡でもあるわけだ、と思い至った。
例えば言葉や習慣のわからない国にポンと投げ出されたら、クリストファーと同じだよなって。


何であってもイライラせずに、無理やり腕をつかみながら理解させるのではなく、
根気良く笑顔で話しを聞かんとな、なんて思ったりして。

少しは優しくなれるかな?