この作品はスパイ小説です。
ですが、派手なスパイ小説が好きな人にはつまらないかもしれません。
ちなみにグレアム・グリーンは映画「第三の男」の原作者でもあります。
「BOOK」データベースより引用
イギリス情報部の極秘事項がソ連に漏洩した。スキャンダルを恐れた上層部は、
秘密裏に二重スパイの特定を進める。
古株の部員カッスルはかろうじて嫌疑を免れた。
だが、彼が仲良くしていた同僚のデイヴィスは派手な生活に目を付けられ、疑惑の中心に。
上層部はデイヴィスを漏洩の事実ともども闇に葬り去ろうと暗躍するが…。
自ら諜報機関の一員だったグリーンが、追う者と追われる者の心理を鋭く抉る、スパイ小説の金字塔。
この小説はスパイものなのに派手さもなく、きわめてスパイ(情報部員)の日常を書いている。
どんな世界に所属していても、悩みや行動はみな共通なんだと思う。
みんなが「007」ではないのだ。
どうしてこのとき、このような行動をとったのか。
その場にいたら誰でも同じことをしたのではないか。
頭ではわかっていても、その通りに動くだろうか。
そのとき一番大事なものは何か?
人間の心理状況は単純でいて、複雑だ。
この作品を読んだのはずっーと前で、実はスパイもの、という印象は薄い。
情報部員という特殊な環境であること自体は勿論本書においては重大なファクターなのだが、
題名どおり、人間の本質をメインにキッチリと描いた秀作だと思う。
人間の内面に主眼を置いている作品だからこそ、自分のなかにある「共通点」を見つけられる。
「共通点」は人それぞれ。読んだ人の数だけ「共通点」があるのだと思う。
読書の面白さって、こんなところにあるんじゃないかなあ。
人によって持っているパラメータは違う。
読む人によって、当然でてくる解答(感想)は変わってくる。
どんな解答がでるか。
そこが「ヒューマンファクター」なんだろう。
まあ、読書じゃなくても、何にでも当てはまることですけどね。
人の書評を楽しみにするというのも、どんなパラメータを持っている人なんだろうって
想像する楽しみがあるのかもしれない。
とりとめもなく、そんなことを考えた。