吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

【さ行】の作家

黄金列車

著者:佐藤亜紀出版社:KADOKAWA ドイツ崩壊が近づく中で、ユダヤ人から没収した資産を管理するハンガリーの役人バログはその資産を退避するための「黄金列車」運行メンバーとなる。 混乱の中、生きるため、欲求のためあからさまに財産を狙うあらゆる人間た…

月人壮士(つきひとおとこ)

著者:澤田瞳子出版社:中央公論新社 螺旋プロジェクト3冊目。プロジェクトの土台となる山族と海族の対立は天皇家と藤原氏に置き換えられていたが今までの中では控え目な扱い。人名の読み方が面倒なうえ、家系図をたびたび確認するためテンポよく読めず、時…

三人の二代目(上下) /堺屋太一

久しぶりに堺屋太一作品を読みました。う~ん、もう少しコンパクトにしてほしかった。 有名どころの二代目たちである上杉景勝、毛利輝元、宇喜多秀家という面白いところにスポットを当てた作品です。「新しい仕組み」で織田信長が台頭し始め、上杉家、毛利家…

写楽 閉じた国の幻 /島田荘司

とにかく長い作品でした。主人公の男は写楽の研究者。冒頭、自分の不注意から六本木のビルの回転扉で子供を喪ってしまう。それをきっかけに陥る負のスパイラルにかなりのページ数が割かれるが、事故を検証するためのスタッフの一人として出会う非のうちどこ…

道鏡・家康 ::坂口安吾

道鏡、斎藤道三、豊臣秀吉、黒田如水、徳川家康、織田信長などを描いた中/短編集です。古い作品ゆえ読みにくい部分は多少ありますが独特の坂口安吾節とでもいうのでしょうか、ところどころに見られる講談のような語り口が臨場感を醸し出します。 「道鏡」 …

オリンピア ナチスの森で ::沢木耕太郎

ベルリンオリンピックの記録映画「オリンピア」は評価が高いというのは知っていますが実際には観たことがありません。ナチスドイツのプロパガンダ映画と言われた作品がなぜ評価が高いのだろうという疑問がありますが、実際に観ない事には判断はできませんね。…

本に埋もれて暮らしたい /桜庭一樹

桜庭一樹読書日記の第四弾です。相変わらずの読書量に驚き、編集者たちとの間に交わされる日常の楽しい会話が楽しめます。桜庭さんの読む本と自分の読む本のシンクロ率は徐々に上がっているような気がしていますが、それでもまだまだ知らない本がいっぱいあ…

絶対音感 ::最相葉月

出版されてから10年以上経過しているので、当時と事情は変わっているかもしれませんが絶対音感を持たない者からすれば充分すぎる情報量である。巻末の参考文献の数と取材対象者の名前の数を見るだけでかなりの情報収集が為されたことがわかる。 恥ずかしなが…

血の味 ::沢木耕太郎

「中学三年の冬、私は人を殺した」。二十年後の「私」は、忌まわしい事件の動機を振り返る―熱中した走幅跳びもやめてしまい、退屈な受験勉強の日々。不機嫌な教師、いきり立つ同級生、何も喋らずに本ばかり読んでいる父。周囲の空虚さに耐えきれない私は、い…

高炉の神様 ::佐木隆三

赤朽葉家の伝説を読み、本書を積んでいることを思い出した。今こそ読む時期でしょう。 明治初期に生まれ、八幡製鉄所で「宿老」として98歳まで働いた職工、田中熊吉さんの溶鉱炉に懸けた人生を描いています。著者の佐木隆三さんといえば「復讐するは我にあり…

赤朽葉家の伝説 ::桜庭一樹

ようやく出た文庫版。我慢に我慢を重ね、ようやく読めました。 今更説明する必要も無いでしょうが、「辺境の人」に置き去られ、後に「千里眼奥様」と呼ばれる万葉、万葉の娘で暴走族上がりで売れっ子漫画家となる毛鞠、そして毛鞠の娘であり平凡に生きる瞳子…

民間軍事会社の内幕 ::菅原出

イラク戦争の際に登場した「民間軍事会社」は、究極の国家行為である戦争のイメージを大きく変えた。彼らの事業は、要人警護はもちろんのこと、戦闘地域でのロジスティクスから捕虜の尋問、メディア対策、さらには正規軍のカバーに至るまで多岐にわたる。そ…

お好みの本、入荷しました --桜庭一樹

Web上で連載されている読書日記の書籍化第三弾です。今回はめでたく結婚された桜庭さんの結婚前後の話しが含まれているので今までとは少し趣きの違う桜庭一樹の一面も見せてくれました。 それにしてもあいかわらずの読書量には驚きっぱなしだ。一連の読書日…

凍 --沢木耕太郎

極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰る…

高丘親王航海記 --渋澤龍彦

貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病ん…

東京公園 --小路幸也

小路さんの作品らしい、心温まる雰囲気がいっぱいの作品でした。大学生の圭司は公園で偶然に出会った初島という男から、自分の妻の百合香と子供を尾行し写真を撮って欲しいと頼まれる。都内の公園を散策する親子を撮り続けるうちに彼女に魅かれて行く・・・ …

桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。 --桜庭一樹

「書店はタイムマシーン」よりも前のWeb日記の文庫化である。やはりこの人の読書量は尋常ではない。何かにつけては本屋に寄り、買い、読み、風呂でも読み、眠るまで読み、読書家の鏡である。 そして、類は友を呼ぶのだ。相変わらず彼女の周辺に蠢く編集者た…

赤×ピンク --桜庭一樹

「BOOK」データベースより引用東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ガールファイト、集う奇妙な客たち、どこか壊れた、でも真摯で純な女の子たち。体の痛みを心の筋肉に変えて、どこよりも高く跳び、誰よりも速い拳を、何もかも粉砕…

シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン --小路幸也

東京バンドワゴンの続編、ようやく読みましたぁ。登場人物が多いので覚えているのかちょっと不安でしたが、案外覚えているものですねぇ。おかげでスラスラ読めました。今回気付いたのですが「東京バンドワゴン」が正式店名は「東亰バンドワゴン」だったって…

少女七竈と七人の可愛そうな大人 --桜庭一樹

ここのところ次々と桜庭作品が文庫化されている気がする。「赤朽葉家の伝説」の出る日も近いか?おかげでなかなか先にすすめないでいるが、この作品は「赤朽葉家の伝説」を読む前に読んでおいて良かったのかもしれない。(でも早く読みたい赤朽葉家) 「BOOK…

危機の宰相 --沢木耕太郎

「BOOK」データベースより引用1960年、安保後の騒然とした世情の中で首相になった池田勇人は、次の時代のテーマを経済成長に求める。「所得倍増」。それは大蔵省で長く“敗者”だった池田と田村敏雄と下村治という三人の男たちの夢と志の結晶でもあった。戦後…

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない --桜庭一樹

「BOOK」データベースより引用その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志…

ブルースカイ --桜庭一樹

「BOOK」データベースより引用西暦1627年、ドイツ―魔女狩りの苛烈な嵐が吹き荒れるレンスの町で、10歳の少女マリーは“アンチ・キリスト”に出会った…。西暦2022年、シンガポール―3Dアーティストの青年ディッキーは、ゴシックワールドの昏い眠りの中、絶滅した…

卒業 --重松清

「BOOK」データベースより引用「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時…

粗にして野だが卑ではない―石田禮助の生涯 --城山三郎

「BOOK」データベースより引用三井物産に35年間在職し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった“ヤング・ソルジャー”―。明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から“卑ではない”ほんものの人間の堂々たる人生を著者…

推定少女 --桜庭一樹

「BOOK」データベースより引用とある事情から逃亡者となった“ぼく”こと巣篭カナは、逃げ込んだダストシュートの中で全裸の美少女・白雪を発見する。黒く大きな銃を持ち、記憶喪失を自称する白雪と、疑いつつも彼女に惹かれるカナ。2人は街を抜け出し、東京・…

書店はタイムマシーン 桜庭一樹読書日記 --桜庭一樹

しかし、この読書量は一体・・・言葉が続けられないくらいの読書量だ。それもジャンルが広い。海外作品がとりわけ多い。題名どころか作者すらほとんど知らない自分に気付かされ、撃沈。一体何冊出てきたかわかりませんが、私が読んだ本は確か5冊を越えたけど…

ホームタウン --小路幸也

「BOOK」データベースより引用札幌の百貨店で働く行島征人へ妹の木実から近く結婚するという手紙が届いた。両親が互いに殺し合った過去を持つ征人と木実は、家族を持つことを恐れていたにもかかわらず。結婚を素直に喜ぶ征人。だが結婚直前、妹と婚約者が失…

高く遠く空へ歌ううた --小路幸也

講談社BOOK倶楽部より引用子どものころは、もっとどきどきした、たくさんの発見があった――僕の片眼の暗闇には、もう一人の〈僕〉がいる港に霧が出た夜には「赤眼の魔犬」が現れ、次の日には必ず人が死ぬ――。高くて広い空に囲まれた町で暮らす、少年・ギーガ…

空を見上げる古い歌を口ずさむ --小路幸也

「BOOK」データベースより引用「みんなの顔が“のっぺらぼう”に見えるっていうの。誰が誰なのかもわからなくなったって…」兄さんに、会わなきゃ。二十年前に、兄が言ったんだ。姿を消す前に。「いつかお前の周りで、誰かが“のっぺらぼう”を見るようになったら…