ここのところ次々と桜庭作品が文庫化されている気がする。「赤朽葉家の伝説」の出る日も近いか?おかげでなかなか先にすすめないでいるが、この作品は「赤朽葉家の伝説」を読む前に読んでおいて良かったのかもしれない。(でも早く読みたい赤朽葉家)
「BOOK」データベースより引用
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
「辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。」
と、過激な言葉ではじまるが、物語の舞台は静謐さを強調する旭川という土地。
閉塞感漂う知り合いだらけの狭い世界。
そこでは美しく生まれてきてしまった川村七竃と、幼馴染の雪風は特別な存在として見られる。
鉄道模型という二人の意外な趣味は、自由に走り回ることのできないレールを想起させる。
時代がかった言葉遣い、雪国で鮮やかにその色を強調するナナカマド、静かで息苦しい旭川と、動的で自分が「何者でもなくなる」ことができる東京、女性教師が「いんらん」になる事を心に決めることもエキセントリックだが共通して描かれるコントラスト。
語り手がバトンタッチしていきながら淡々進むストーリーと、そしてその中に見え隠れする力強い意思がうまく表現されています。
長かった髪を切り、そこに雪風を見出す七竈の心模様などはよく伝わってきました。なかでもビショップという老犬による語りは面白い設定ですが不自然さを感じさせません。微笑ましく受け入れられます。
美しいコントラストに彩られた「成長への第一歩」を描いたストーリーは、自分の過去にもついつい思いをめぐらせてしまう話でもありました。
解説は古川日出男が書いています。この作品の単行本が出た後すぐの頃、桜庭さんが面識のない古川さんにメールを送ったらしい。
古川さんと共通する担当編集者の携帯メールを利用して。
その内容は・・・
「うぉん!」
「ベルカ、吠えないのか?」で犬語を理解している?古川さんが(笑)面識の無い桜庭さんの作品の解説を書いているのは必然かも。(だけど完全に古川ワールド)ちなみに両者はいまだに面識はないらしい。
ここまで来たのだからと、読む予定の無かった「赤×ピンク」を入手しました。
時間かせぎでもありんすよ。