吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

【た行】の作家

ペニス

著者:津原泰水出版社:早川書房 津原作品を読み続けてきたが、この作品に限っては随分前から読むか読むまいか悩ましい存在だった。古書店でも見つけることはできなかったが、図書館にあることは知っていたので、その気になればいつでも借りられる。でも題名…

零號琴

著者:飛浩隆出版社:早川書房 特種楽器技芸士と相棒のドタバタSFって表現は単純に過ぎるかもしれないがある意味予想を裏切られた展開だった。「美縟」という惑星の首都で行われる開府五百年祭で想像を絶する巨大楽器の演奏、住民が参加する假劇やら描かれる…

世にも奇妙なマラソン大会 /高野秀行

今年読んだ「空白の五マイル」の作者、角幡唯介さんは早稲田大学探検部でした。 しかし、早稲田大学探検部といえば高野さんです。夏のお供にはやはり高野さんです。 硬派なイメージの角幡さんに比べるとビックリするくらいに軟派な高野さん。 今回はほぼ勢い…

11 eleven ::津原泰水

津原泰水という人は自分の頭の中に確固たる世界観があって、その中で浮かぶ物語を自分の思い描いたまま自由に表現しているのでしょう。読者は当然この世界観を共有しているよね?とでも思っているかのように説明がほとんど無く、ギリギリまで研ぎ澄ました言…

竜が最後に帰る場所 /恒川光太郎

「風を放つ」「迷走のオルネラ」「夜行(やぎょう)の冬」「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」の5篇。 「風を放つ」は正直なところ何が言いたいのか意味が掴みきれませんでした。ただ見知らぬ人間との電話での会話は相手が見えないだけでちょっと怖い。そんな怖さを…

アクアポリスQ /津原泰水

水没したQ市の沖合いに浮かぶ人工の島、アクアポリスを舞台にしたSFです。コンピュータで完全管理された島と、「空虚」という出来事をきっかけに混沌に陥った日本を「統治府」が支配している。空虚によって「希薄者」となった人々が憑依されると、モンスタレ…

草祭 /恒川光太郎

不思議な町、「美奥」を舞台にした連作短編5篇の物語です。先月読んだ「南の子供が夜いくところ」は南国を舞台にしていたがこれはどこか懐かしさを感じさせる日本的情緒溢れる作品でした。子供の頃に遊んだ野原や林、古い家屋や駄菓子屋などの記憶が読みなが…

琉璃玉の耳輪 /津原泰水

尾崎翠/原案 年末に読んだ「バレエ・メカニック」が微妙だったため、多少心配しましたが杞憂に終わりました。今年はじめての感想記事がこれでよかったと思います。 原案/尾崎翠となっているが、映画向けの脚本として書かれたものを津原泰水がアレンジして小…

南の子供が夜いくところ /恒川光太郎

諸事情により久しぶりに図書館で借りてきました。久々に行ったら年末年始にシステムが変わるタイミングらしく貸し出しカードも変わってました。受付で「久しぶりのご利用ですね」と言われ、思わず「スンマセン」と謝ってしまった。損した気分(笑)確かに最…

バレエ・メカニック ::津原泰水

全てを読んでいないが、今までの津原作品のエッセンスが散りばめられている。耽美、幻想、奇想、混沌、退廃等々。しかし、結局のところ今まで読んだ事がないタイプの作品だと思う。早いうちにはっきり明言しておきますが、これ、理解しきれていません(笑)…

パプリカ ::筒井康隆

女性誌に連載されていた作品ですが、ずいぶんとオッサンに都合のいいキャラや展開に苦笑してしまいます。もともと筒井作品のナンセンスな作風は嫌いじゃありませんが、この作品に限ってはあまり好きになれませんでした。 ノーベル賞候補になっている主人公の…

秋の牢獄 ::恒川光太郎

近所の紅葉も綺麗になってきたので、読むには丁度良い頃合です。「秋の牢獄」 「神家没落」 「幻は夜に成長する」の3篇。 恒川さんの作品は三作目ですが、「幻は夜に成長する」がちょっと今までと違う印象でした。安定した独特の世界観を持っている作家さん…

たまさか人形堂物語 ::津原泰水

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えた…

「悪」と戦う ::高橋源一郎

言葉の発達が遅いキイちゃん一歳半と、言葉の発達が早かったお兄ちゃん、ランちゃん三歳の兄弟の話しです。彼らのお父さんは、作家の高橋さん。宮沢賢治の「ことば」で胎教を繰り返したランちゃんのことばはあらゆる「文学」の引用であり、一方胎教を放棄し…

少年トレチア ::津原泰水

文庫版の表紙は少年というより青年が描かれている(萩尾望都)ので、内容のイメージがあまり伝わってこなかったが、読み始めは不気味で思っていた以上にグロテスクで嫌~な予感が。。。このペースでこの長編が続いたら辛いかも、と思うような展開です。子供…

海賊モア船長の遍歴 ::多島斗志之

シリーズ第二弾の「海賊モア船長の憂鬱」に続いてさっそく読みました。文庫本で2段組だった事に驚きましたが非常に読みやすくグイグイとストーリーに引き込まれ、こちらのほうが格段に面白かったです。 モアが率いる粗野で、下品で鈍感で、身勝手で、狡猾で…

海賊モア船長の憂鬱(上下) ::多島斗志之

イギリス東インド会社に勤めるクレイは、インド東海岸にある港街、マドラスに到着した。謹厳実直で知られる上席商務員が“マドラスの星”と称される400 カラットのダイアモンドを手に姿を消したのだ。誘拐か、はたまた着服か。事件にはどうやら「果敢にして知…

綺譚集 --津原泰水

今月、着々と読み進めていた作品ですが、この作家さんは凄いなあ。独特の妖しさとグロさとエロスは、一気に読むよりじっくりと読む短編集だと思う。唐突に始まり、唐突に終わる。それも考えが及ばない言葉でいきなり違う世界に持っていかれる感覚に翻弄され…

怪しいシンドバッド --高野秀行

インド、アフリカ、タイ・ビルマ、中国、コロンビアなど、19歳~29歳までに高野氏が秘境、辺境に出かけた際に起きた(起こした?)数々のエピソードをまとめたような作品です。既読作品もあるのですが未読作品に関係する内容も書かれているので読まないと。 …

将軍が目醒めた時 --筒井康隆

出久根達郎さんの「古本綺譚」にでてきた実在した人物、芦原将軍の興味をもったため、やはり同じ人物を題材にした筒井作品を読みました。この短編集は持っていなかったいし読んだ記憶もなかったのですが、読んでみると2~3作品に既読感があったので友人から…

雷の季節の終わりに --恒川光太郎

いいですね、この世界観。地図に載っていない「穏(おん)」というエリアは外の世界からは見ることができない。穏には春夏秋冬以外に神の季節である「雷季」という二週間ほどの季節が冬と春の間にある。雷季になると穏に住む人々は家に閉じこもり、外は風と…

古本綺譚 --出久根達郎

古本の世界は果しなく深く、魅惑的な混沌がある。この世に二つとない幻の本を手に入れたいと夢見る愛書家と古本屋。古本世界に住む、本を愛し本に憑かれた風変りな人びとの、古本をめぐる悲喜劇を、古本世界の一住人である古書店主が軽妙に描く、古本物語。…

怪魚ウモッカ格闘記 --高野秀行

「BOOK」データベースより引用探し物中毒の著者は、ある日、インドの謎の怪魚ウモッカの情報を入手、「捕獲すれば世紀の大発見!」と勇み立つ。ルール無し、時間制限無しの戦いが始まった。次々と立ちふさがる困難を砕き、著者は進む。地元漁民の協力を仰ぐた…

蘆屋家の崩壊 --津原泰水

「BOOK」データベースより引用定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、富士市では赤い巨…

文楽のこころを語る --竹本住大夫

「BOOK」データベースより引用当代随一の浄瑠璃語りにして人間国宝である著者が、三大名作から十年に一度の珍しい演目まで十九演目について、作品の面白さ、詞の一行一行にこめられた工夫や解釈にいたるまで、芸の真髄を語り尽くした、すべての文楽ファン必…

ファイティング寿限無 --立川談四楼

「BOOK」データベースより引用若い!貧乏!売れない!そんな落語家が、突然にボクシングを始めた。きっかけはケンカ。オレには、ファイターの素質があったのか!?「売れるためには、まず有名になること」師匠の言葉を信じて、一人前の芸人になるために、チャンピ…

さがしもの --角田光代

新潮社Webサイトより引用「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「…

古本道場 --角田光代、岡崎武志

フリーライター、書評家である古本の師匠、岡崎武志さんがテーマを出題し、それに則り古本初心者?角田光代がアチコチの個性豊かな古本屋さんに出向き色々な思いをめぐらしながら古本を購入し、古本道を極める過程が綴られる。そんな展開。 古本屋さんはほと…

幻獣ムベンベを追え --高野秀行

ワセダ三畳青春記がツボだったので早めの第二弾です。 子供の頃は近所にまだまだ自然が多く、森や川や沼みたいな場所があったものだ。その中を分け入って何度探検しかことか。かつては川口浩探検隊シリーズがテレビで放映され、ドキドキしながらテレビの前に…

夜市 --恒川光太郎

夏ですからってまだ梅雨ですが(笑)ホラー大賞ってベタな発想もありつつ、表紙に魅かれて購入。なかなか趣きのある表紙です。日本ホラー小説大賞というのでもう少し怖いストーリーかと思っていたのですが思っていたようなおどろおどろしいホラーものではあ…