吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

古本綺譚 --出久根達郎

古本の世界は果しなく深く、魅惑的な混沌がある。この世に二つとない幻の本を手に入れたいと
夢見る愛書家と古本屋。
古本世界に住む、本を愛し本に憑かれた風変りな人びとの、古本をめぐる悲喜劇を、
古本世界の一住人である古書店主が軽妙に描く、古本物語。
(「BOOK」データベースより引用)

 

勿論、この本は古書店で買いました。
古書店を経営している人の薀蓄というのは、想像を絶すると痛感しました。



三部構成の本書は著者の経験なのか、創作なのか、いまひとつわかりにくいのですが
そのあたりはあやふやで良いのでしょう(きっと)
Ⅰ部は古書を通して見えてくる不思議な話しや、ちょっと可笑しみを感じるささいな話しで
構成されています。



Ⅱ部の「狂聖・芦原将軍探索行」という中編はなかなかの力作で驚く事ばかりです。
こんな人が明治時代から昭和にかけて実在していたなんて知りませんでした。
筒井康隆の「将軍が目醒めた時」のモデルの人らしいです。

 

芦原将軍、興味があれば下記リンクへどうぞ(wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%A6%E5%8E%9F%E9%87%91%E6%AC%A1%E9%83%8E

 

この中編、創作なのか?とも思いましたが、人物像がやけに具体的で本当っぽい。
誇大妄想で自らを「将軍」と名乗り、勅語を発し、それをマスコミがこぞって取り上げ、
世の中をあげて楽しんでいる図は不思議である。
今なら有り得ないけど、その当時の日本はのんびりしてたんですね。
でも案外正しい事を言ってそうなところが笑えます。
(結局本書では創作も混じってるみたいです)



Ⅲは古書店主ならではのお話しで、古書と一緒に紛れ込んでくる手紙やはがきの解析など、
なかなか興味深い。
また古書店の命ともいえる目録作成の過程の話など、興味のある方には一読の価値があるでしょう。

 

これを読んだだけで古書店主になどなれないときっぱりわかったので、ある意味残念でもあります。
(昔、古本屋さんになれたらいいなあ、な~んて考えた事があるもんで 笑)
これからもミーハーな読者一筋で頑張りたいと思うのでありました。