吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

願い星、叶い星 ::アルフレッド・ベスター

短編は「分解された男」とはちょっと印象が違って意外と切れ味がありました。スタージョンと同じような印象を受ける作品がいくつかありましたがクスリとさせてくれる明るさを仄かに感じさせてくれます。


「ごきげん目盛り」「ジェットコースター」「願い星、叶い星」「イヴのいないアダム」「選り好みなし」「昔を今になすよしもがな」「時と三番街と」「地獄は永遠に」

 

「ごきげん目盛り」
 ロボットが狂うとどうなるか、よくあるパターンではあるが、一人称と三人称をうま く使った会話で手が込んでいる。
 判りにくいなあと思っていたがそれが仕掛けということで。
 自他共に認める最高傑作というだけのことはあります。

 

「ジェットコースター」
 ちょっとグロイ描写から始まってスタージョンの「輝く断片」を彷彿とさせますが、 タイムトラベルもの。

 

「願い星、叶い星」
 クライム小説かと思いきや徐々に異能者の話へと変転していきスタージョンぽいテイ ストを感じました。
 ラストに向けての盛り上げ方がうまいです。

 

「イヴのいないアダム」
 とても小さな世界から一気にでかい世界観まで広げるラストが秀逸。この読後感覚は やはりスタージョンのよう。
 あとがきで紹介されているエピソードがとても面白い。

 

「選り好みなし」
 原爆とタイムとラベルとの組み合わせだが、切り口が面白い反面、導入部の軽さから するとブラックなオチに。
 日本人的には言葉がみつからない。。。

 

「昔を今になすよしもがな」
 地球最後の男女の話で舞台はニューヨーク。よくあるシチュエーションだが、二人の 行動や会話がどこかおかしい。
 ラストは明るいのか暗いのか。

 

「時と三番街と」
 これもタイムトラベルもの。うまくまとまってます。(それだけかい!)

 

「地獄は永遠に」
 この作品で本書の半分を占める長編に近い中編です。ダークファンタジーといえるよ うな作品。
 戦争中の退屈を紛らすために刺激を求める男女たちの話で、退廃的な雰囲気は悪くな い。
 でも冗長でわかりにくい。もっと短くすると面白かったのになあ。



全体的にはラストへの持って行き方が「地獄は永遠に」以外は綺麗です。
明るい雰囲気が漂う皮肉が適度に効いていて、平均以上の出来の作品が多かったと思います。