吉祥読本

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象と耳鳴り ::恩田陸

先日行った三菱一号館美術館の記事を書いたところとても印象的な展示品だった「曜変天目」が恩田陸さんの「象と耳鳴り」にも出てくるとべるさんに教えて頂きました。
本書は積んでいたので、ようやく読む理由ができました。ありがとうございます!
(積んでおきながら理由がないと読まないのか?)
曜変天目」が、もろ初っ端の題名に出てくるので驚きました(笑)


これ短編集だったんですね。登場人物は共通していて、連作集という体裁でしょうか。

 

 「曜変天目の夜」「新・D坂の殺人事件」「給水塔」「象と耳鳴り」「海にゐるのは人魚ではない」「ニューメキシコの月」「誰かに聞いた話」「廃園」「待合室の冒険」 「机上の論理」「往復書簡」「魔術師」

 

タイプの違う雰囲気の作品が同じ主人公で描かれているので、恩田作品の特徴をひととおり味わえた気がします。幻想的であったり、推理ものであったり、ホラーっぽいものであったり、幅の広さを感じます。
テイストがそれぞれ違うので、自分の好き嫌いな分野を手っ取り早く見極める事ができそうです。

 

この中で好きな部類の作品は「給水塔」、「海にゐるのは人魚ではない」、「ニューメキシコの月」、「往復書簡」、「魔術師」でしょうか。
自分では「往復書簡」以外は好きな作品の傾向がモロに出たと思います(笑)
表題作の「象と耳鳴り」は、好き嫌いというよりこんな発想を物語りにしてしまうこと自体に虚を突かれた感じでした(笑)

 

恩田作品をまだそれほど読んでいないので偉そうなことを言えませんが、今までの作品は途中までかなり面白いのにラストで失速するパターンが多いように思います。
上記に挙げた作品たちは、短編のためその失速感がかなり薄れていますが、傾向としては惜しい!
と思う部分もやはりあります。
が、恩田作品の作り出す現実世界のなかに潜んでいるちょっとした違和感による恐怖や、身近にある闇をさりげなく描く手腕は素晴らしいと思います。
また、「机上の論理」のように一枚の写真から取りとめもなく推理を膨らませていく展開などはちょっとこじ付けを感じましたが、想像力をめぐらせる楽しさを味わえたと思います。

 

読みたい作品も何作かピックアップしているので、しばらくぶりに恩田作品を再開しようと思います。
なんてこと書きながら、エッセイを読みそうな気配が(笑)