吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

南の子供が夜いくところ /恒川光太郎

諸事情により久しぶりに図書館で借りてきました。久々に行ったら年末年始にシステムが変わるタイミングらしく貸し出しカードも変わってました。
受付で「久しぶりのご利用ですね」と言われ、思わず「スンマセン」と謝ってしまった。
損した気分(笑)
確かに最後に借りたビジネス書は何年前だったか。。。
これを機に図書館利用を増やそうかな。



「秋の牢獄」「夜市」など、過去の作品に共通する日常と隣り合わせた異次元を描いている。
ただし舞台は今までの純和風な作品と違い、南国の島。

 

幻想世界っぽいのは嫌いじゃないし、いつもとちょっと違う印象の恒川ワールドも悪くない。
しかし、せっかくゆる~く連作になっているのだからもう少し話の数を減らすか
結合させてもよかったと思う。(勝手な事言ってます。申し訳ないです)

 

「南の子供が夜いくところ」はプロローグ的な作品ですが、「紫焔樹の島」と合併させたら効果的だったんじゃないでしょうか。「紫焔樹の島」はこの物語にぐいっと引き込む力があったんですが、「南の子供が夜いくところ」は中途半端に感じたんですよね。
で途中のストーリーはところどころ、そこそこに楽しめる話なんですが物足りないなあ、必要ないなあ、ちょいと失敗だったかなあと思うこともありましたが、「まどろみのティユルさん」「夜の果樹園」でグンと面白くなりました。

 

「まどろみのティユルさん」はティユルさんのキャラが会話の中からにじみ出ていたし、土に埋まっている状況にもかかわらず切迫感もなくゆっくりと流れる時間を感じさせるあたりは不思議で巧い。
一番好きな作品でもあります。

 

「夜の果樹園」は幻想的な異世界に閉じ込められる得意パターンですが、出てくるキャラクターがフルーツ人間って何だよ!(笑)
ちょっとグロイ描写もあるけど、先日読んだ洋梨形の男に比べたら可愛らしい(笑)
気付いたらちゃんといつものように恒川さんの世界を享受できたのでした。