吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

さがしもの --角田光代

新潮社Webサイトより引用
「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、
病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。
初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。
持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。
無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。
『この本が、世界に存在することに』改題。



ちょっと頭を切り替えたくてサラッと読める本をチョイスしました。

 

もう、あっという間に読めちゃう本でした。

 

でも予想よりも読み終わるのに時間がかかりました。それでも約2時間ですが(笑)

 

なぜ時間がかかったかというと、読んでいる間に自分の世界にポンっと飛んで行っちゃうからなんです。

 

読んでいる間に自分の過去とか、妄想(笑)の世界にスッともっていかれちゃって

 

気付くと目は文字を追っているだけだったりして、ちょっと戻って読み直したりを繰り返してました。

 

あ、妄想っていうのは、いずれ必ず来る「本たちとの別れ」に関してで、

 

お別れした後の本たちがこうなるといいなあ、なんてことなんで決して変な妄想ではありません、

 

念のため(笑)



角田光代さんの作品はまだあまり読んでないのでどんな作者さんかは、よくわかりません。

 

でも、この「本をテーマにした短い小説」にはとても共感できました。

 

昔の「思い出」や「思い」と不思議とリンクしている作品は何冊かありますが、

 

そんなこんなを、色々と思い出させてくれました。



9つの短編のうち最も印象的だったのは「ミツザワ書店」でしょうか。

 

本のどこが面白いのか?と訊かれたおばあちゃんが、何を訊いてるんだって顔しながら

 

「だってあんた、開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」

 

町から出たことのないおばあちゃんにとって、本は世界への扉だった、ってくだりはとても共感しました。

 

解説を寄せている岡崎武志さん(古本道場の師匠)も同じポイントに共鳴していたので嬉しかった。



「旅する本」、「彼と私の本棚」、「さがしもの」もよかったです。

 

特に「さがしもの」は、「あ、なんかいいな」と思わせてくれる「人のつながり」に暖かさ漂う作品でした。



最後にある、あとがきエッセイには一番激しく共感できる文章がありました。(引用は避けますが)

 

同じ気持ちを持つ人がいると、嬉しいですね。

 

いい気分転換になりましたとさ。