「BOOK」データベースより引用
引っ越しの朝、男に振られた。やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。
ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。
引っ越しの朝、男に振られた。やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。
ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。
追記:第96回文學界新人賞受賞
主人公の優子は元新聞記者であり、精神を煩い入院し、退職後に絵を描きながら
猥雑で小汚く「粋」がない下町としての蒲田、にひとり住んでいる。
作品を通してどことなく懐かしい気だるさが漂い、思い切りストレートだったり、やさぐれた会話(笑)が
微妙な距離感で配置された癖のある男たちとの間で交わされる。
短くて簡単な言葉での会話にもかかわらず不思議な味わいがある。この何気ない会話はワリと好きです。
優子の言動や行動には自己主張が強いように見えて、不安定な心理が垣間見える。
正直なところ、女性の「性」に関する描写に関しては居心地の悪さ、みたいな感覚を覚えてしまうのだが
登場人物との関係性をとても端的に表現しているのかもしれない。
出てくる男たちは、ヒモをやっていた従兄弟とか、うつ病のやくざだったり、痴漢だったりするので
あまり共感してはまずそうなのだが(笑)、なんだかんだと悪い連中ではない。
解説を書店員の女性が書いていて、「痴漢」をやっている男が本作品の中では一番の
お気に入りってくらいですから(笑)
この作家さんが女性に人気があるのは、女性の心理描写が核心を突いているからなのでしょうか。
猥雑で小汚く「粋」がない下町としての蒲田ってのは、かつて2年ほど蒲田と関わっていた経験があるので
とても的確な表現だなと感心しています。「黒い呑川」が目に浮かびます(笑)
さらっと、あっという間に読めたのですが情景とか雰囲気が非常に簡潔に伝わってきた作品でした。
ただし、全てはムダ話なのだ。
併録されている「第七障害」は、乗馬(障害レース)をやっていた男女を核とした話しです。
その分、キャラクターに感情移入がしやすい。
うーん、感情移入っていうのは、適当な言葉ではないですねえ。さほど移入してないか。
淡々としていて、むしろ客観的に見守っていた感じですね。微妙な心理描写は感じ取れたと思います。
この作品の評価は読み手の年齢や男女差が関係してくるかもしれません。読後感がよかったです。