吉祥読本

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逃亡くそたわけ --絲山秋子

講談社BOOK倶楽部より引用
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、
入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。
名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。
道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。



躁鬱病で21歳の「花ちゃん」と鬱病で24歳の会社員「なごやん」が入院先の精神病院を脱走し、

 

なごやんポンコツ車で九州を舞台に逃亡の旅にでるというという、ただ、それだけの話しです。

 

九州の方言丸出しの「花ちゃん」と、頑なに標準語にこだわる名古屋出身の「なごやん」の

 

ユーモアのある会話と脱力感に、ついクスリとしてしまう。

 

最近読んだ池上永一さんの繰り出す沖縄の言葉に比べると多少聞き覚えのある九州の方言は

 

いいテンポでとても滑らかに理解できました。

 

一部わからない言葉があったのですが、その辺は雰囲気で(笑)

 

絲山さんの会話、やっぱ好きかも。まだ2作目だけど。



脱力感漂う会話と行動は妙に明るく感じるが、いつ爆発するかもしれない躁鬱の危うさも孕んでいて、

 

時に微妙な緊張感を伴う。

 

一方的に方言で話しまくる花ちゃんと、名古屋出身を隠したがるなごやんの距離感は

 

「イッツ・オンリー・トーク」で感じた主人公と男たちの距離感よりも少しだけ多くなりますが、

 

やはり微妙な距離感がこの作品でも肝っぽいです。



「イッツ・オンリー・トーク」同様、精神を患う人物が主人公ですが、

 

「イッツ・オンリー・トーク」での不安定感漂う主人公に比べ作者自身、

 

この作品の主人公とともに何らかの折り合いをつけたかのような安心感みたいなもの感じました。

 

洗練された、という言葉が妥当かどうかわかりませんが、そんな印象。それとも克服か?

 

結論の出ていない終わり方ですが、なんとなく明るい方向にいくのかなあと

 

少しの爽快感と共にぼんやりと味わった気分です。



九州観光案内みたいな話しでもあるので(笑)、九州の名産品とか知ってるともっと楽しめそう。

 

「いきなり団子」とかね。食べたいというよりなんだかどんなものか気になります。調べましたが(笑)



九州には修学旅行と、何度かの出張で行ったことがあるだけですが改めて阿蘇を旅行したくなりました。

 

温泉は間違いなさそうだし(笑)



そうそう、伊坂さんの実験4号でも出てきた「The ピーズ」がこの作品でも大事なアイテムとして使われていました。

 

作家さんに人気があるのでしょうか。それも気になります。





「袋小路の男」も手に入れました。話しが混在してしまう気がするので、いくつか別の作家さんを読んでから

 

近日中に読もうと思います。