吉祥読本

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琉璃玉の耳輪 /津原泰水

尾崎翠/原案

 

年末に読んだ「バレエ・メカニック」が微妙だったため、多少心配しましたが杞憂に終わりました。
今年はじめての感想記事がこれでよかったと思います。

 

原案/尾崎翠となっているが、映画向けの脚本として書かれたものを津原泰水がアレンジして小説として書き上げた作品ということです。
尾崎翠は明治時代に生まれた女性で昭和にかけて生きた人ですが、名前を聞いたことがあるくらいで読んだことはありません。
が、本作を読み終わるととても興味が涌き、続けて「第七官界彷徨」という作品を読んでしまいました。

 

尾崎翠の基になる本作品は昭和2年に書かれ、探偵小説の黎明期に女性探偵を登場させるという当時としては最先端の探偵小説だったようだ。
いずれはその基となった作品を読もうと思いますが、津原さんお得意の幻想的な世界観はお見事でどの程度原案に近いものなのか確認するのが楽しみです。

 

ストーリーは、名探偵・唐草七郎の基で働く女性探偵・岡田明子に
「ある三人姉妹を見つけ出し、一年後にホテルの一室に連れてきてほしい」
と、謎の人物から不思議な依頼が為される。
手がかりは名前と三人の片耳に付けられているらしい琉璃玉の耳輪だけである。

 

登場人物たちが女スリ、旅芸人一座、貴公子、異常な性癖を持つ富豪等々、一癖も二癖もある人物ばかり。
しかし登場人物は多いわりに、それぞれキャラがたっているため混乱もほとんどなく、
その世界観にどっぷりと浸かる事ができた。

 

前半は幻想世界の中で暗中模索が繰り広げられ、淫靡かつモダンな雰囲気が非常に好み。
俄然引き込まれまくりです。
後半からその世界が薄れ、追いつ追われつと慌しい展開になってきます。
あとがきで、後半はかなり津原さんが創作しているらしいことが書かれていましたが
そうなると設定のみならず、前半部分は尾崎翠の構築した世界観なのだろうか?
で、あるならば、なんと先鋭的な女性作家だったんだろうと愕然とする。
勿論、後半が面白くなかったわけではなく、一見無駄に思われるような状況描写も
エンディングに向けての静かな橋渡しだったと思える。
耳輪の謎は途中でなんとなく予測ができるが、大きな展開への広げ方が津原さんらしい。

 

読後、興味のまま「第七官界彷徨」を読んだが、思った通りかなり面白い作風です。
もう少し尾崎翠に関しては読んでおきたいと思わせてくれました。
そして改めて津原さんが作り出す多彩な世界に拍手喝采です。
一体どのような思考回路なのか、一体いくつ引き出しを持っている作家さんなのでしょう。
津原作品も完全制覇してやろうと、実はメラメラしています(笑)