大森望が選ぶ2021年の短編SFベスト10。(中編がひとつ)
なぜか不思議な生き物を扱う作品多し。
良かった作品は酉島伝法の「もふとん」と伴名練の「百年文通」。
眠りの質が悪い者としてか結果がどうあれ取り敢えず「もふとん」を手に入れたいぞ。
ただ作中で描かれるブラックな社会背景は遠慮したい。
十三不塔「絶笑世界」で描かれる笑わせない漫才コンビや
電信柱に恋する女性を描く坂崎かおる「電信柱より」など不思議な設定の作品は
妙に切なかったりする。
中編「百年文通」は大正と現代をつなぐ机を通して二人の少女の交流が伴名練らしい
世界観で描かれる。
百合系SFを読んで面白いと思っている自分にちょっと戸惑うが(苦笑)
素直に勢いで楽しめた。
ちなみに「無断と土」には歯が立たず。
「異常論文」に手を出さなくて正解だったかも。
本作品中、唯一読んでいた(「ポストコロナのSF」収録)津原泰水さんの
「カタル、ハナル、キユ」の読後に訃報に接して愕然とする。
架空の文化とパンデミックを濃密に物語る力作で初読時より
面白く読めたなと思っていたのだが。
確かに自身のあとがきに闘病中で長い文章が書けないとあったが、
まさかこんなことになるとは。。
衝撃を受けた名作短編集「綺譚集」と「11 eleven」だけではなく、
幽明志怪シリーズやたまさか人形堂シリーズなど、
様々な分野で楽しませていただきました。
感謝を添えて、ご冥福をお祈り申し上げます。
【収録作品】
酉島伝法: 「もふとん」
吉羽善: 「或ルチュパカブラ」
溝渕久美子: 「神の豚」
高木ケイ: 「進化し損ねた猿たち」
津原泰水: 「カタル、ハナル、キユ」
十三不塔: 「絶笑世界」
円城塔: 「墓の書」
鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座): 「無断と土」
坂崎かおる: 「電信柱より」
伴名練: 「百年文通」