吉祥読本

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アクアポリスQ /津原泰水

水没したQ市の沖合いに浮かぶ人工の島、アクアポリスを舞台にしたSFです。
コンピュータで完全管理された島と、「空虚」という出来事をきっかけに混沌に陥った日本を
「統治府」が支配している。空虚によって「希薄者」となった人々が憑依されると、
モンスタレーション(怪物化)してしまう。
読んでいない人には意味がわかりませんね(笑)

 

このアクアポリスを破壊しようとする者たちと守ろうとする者たちの戦いを描いているわけだが、
このアクアポリスを設計したのが、陰陽師蘆屋道満の末裔を名乗る謎の女「J」であり
アクアポリス自体が「五芒星」の形になっている。
SF風伝奇小説みたいに思えばいいか。
池上永一さんの「シャングリ・ラ」をちょっと思い出しました。

 

津原さんのSFといえば「バレエ・メカニック」で苦労しましたが、それに比べればラノベ調で理解しやすい作品です。
水上と陸上の違いがあるが「少年トレチア」でも崩壊する街を描いていたっけ。
不安定な基盤の上に生きる人間の姿を通して訴えたいものがあるんでしょうけど、
「少年トレチア」は理解しきれなかったし
これは軽すぎてあまり難しく考えなくてもいいのは楽ですが、物足りなくて、
いずれにしても不満じゃないか(笑)
濡女(ぬれおんな)とか牛鬼(うしおに)とか妖怪めいたものが出てくるんですが、
あまり怖くも無くて作品分野が不明の中途半端な印象。こんな世界観は嫌いじゃないんですけど。。。。

 

「綺譚集」では「アクアポリス」という短編があり、広島あたりが舞台でした。
「アクアポリスQ」では地理的に日本国内のどこかは明記されていませんが、降り注いだ「空虚」で
水没した街、「統治府」による支配などのキーワードを「広島」と関連付けてしまうのは
考えすぎでしょうか。(ちなみに津原さんは広島出身なんですよね)