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四畳半王国見聞録 ::森見登美彦

事前知識がなく、題名を見る限り「四畳半神話大系」の題名に絡めたエッセイ集とばかり思っていたが
小説だったのね。
ちょっと違うけれど。マキメ作品で言うところの「ホルモー六景」のような位置付けのようにも感じます。
「四畳半七景」みたいな(笑)

 

「四畳半王国建国史」「蝸牛の角」「真夏のブリーフ」「大日本凡人會」
「四畳半統括委員会」「グッド・バイ」「四畳半王国開国史」の7篇。

 

森見作品を読んでいるとご存知であろうキーワードがところどころ出てくるので、できれば他の作品、
特に「四畳半神話大系」を読んでいればこの世界観がより理解できることでしょう。
いやどうせなら「夜は短し歩けよ乙女」もですね。

 

樋口、小津、相島という名前にピンと来ませんか?
図書館警察、福猫飯店、詭弁論部、自転車にこやか整理軍、映画サークル「みそぎ」・・・
ピンと来ますよねえ?
これらのキーワードが再び縦横無尽に駆け巡るわけではなくさりげなく出てくることのほうが多いのですが、
これらがどんなものかを何となく知っているとちょっとだけ嬉しくなるという効果はあります。

 

本題です。

 

四畳半に思いを馳せるモリミーの意気込みが感じられます。
四畳半神話大系」のラストでは、一見外部に向けて分裂、拡張を繰り返していたように思える四畳半は
確かに一切外側には拡張していなかった。
四畳半は内向きに分裂、拡張を繰り返しているのですよ。
そう、四畳半は内向的な宇宙なのだ。

 

この短編集にでてくる連中は「大日本凡人會」なる組織であり、非凡人であるがゆえに凡人を目指す。
その能力は揃いも揃って凡人離れしている。しかも羨ましくない。そして揃いも揃って阿呆ばかりだ。
その他の登場人物も、どいつもこいつも健気に阿呆っぽい。

 

愛すべき妄想に囚われた阿呆たちの話ではあるが、いや男汁が溢れる作品ではあるが、
四畳半神話大系」の時ほどの濃度が感じられなかったのが残念。
やはり洗練されてしまったのか。
あの匂いたつような雰囲気の作品には、やはりもう戻れないんだろうなあ、と寂しくもあり。

 

そう思うのも自分がすでに四畳半世界に取り込まれている証なのだろうか。
とりあえず水玉のブリーフを手に入れるところから始めようか。。。。
嗚呼、そんな自分が阿呆っぽい。