吉祥読本

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世にも奇妙なマラソン大会 /高野秀行

今年読んだ「空白の五マイル」の作者、角幡唯介さんは早稲田大学探検部でした。

しかし、早稲田大学探検部といえば高野さんです。夏のお供にはやはり高野さんです。

硬派なイメージの角幡さんに比べるとビックリするくらいに軟派な高野さん。

今回はほぼ勢いでサハラ砂漠のマラソン大会に参加することになります。

動向するのは探検部の先輩でテレビのディレクターをしている竹村氏と、

同じく探検部の後輩でフリーのテレビカメラマンの宮澤氏。

宮澤さんもツワモノでして、アマゾンの旅行中に強盗に襲われ、無一文になったところでペルーの行商人に拾われ、道端で物売りで凌いだことがあるらしい。

さすが早稲田大学探検部は人材が豊富だ(笑)

 

言葉もほとんどわからず、日本は勿論の事、アジアで唯一、初の出場者という名誉とは裏腹に何とも心許ないチャレンジにはいつもながらあきれてしまう。

普段からほとんど走っていないにもかかわらず、フルマラソンにそれも砂漠を走るなどという過酷なレースに参加してしまうエネルギーは賞賛ものだが。

 

お叱りを受けるかもしれないが、高野さんの作品は結果よりも過程が楽しい。

過酷な状況がわかっているのに、何とかなるさ!的なノリでいつも楽天的。

そしてほとんどの場合なんとかしてきているのだから結局凄い男なんでしょう。

 

  「マラソンの勝者は一人じゃない。完走したランナーはみんなが勝者なんだ」

 

 

本作は他に「ブルガリアの岩と薔薇」「名前変更物語」という短い作品も収録されている。

二本とも馬鹿らしい話だが、高野さんの周りにはいつも変なことが起きるというか

起こしているというか。

 

「謎のペルシア商人」は7つの特につながりはない不思議な掌編で構成されています。

この中にある「二十年後」は、マラソンで同行した竹村先輩との話。

ちょっと感傷的で高野さんらしくないけれど、好きな一編です。

 

 

やっていることは阿呆ぽいから、メジャーどころにはなかなか理解してもらえない存在かもしれませんが、今後ともテキトーに頑張ってほしいです。まだまだ応援します~