吉祥読本

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イラク水滸伝

作者:高野秀行
出版社:文藝春秋


偉そうで申し訳ないが最近の高野さんの作品レベルの高さは目を見張るものがある。

イラクの事は詳しくないが、水滸伝に例えてくれるだけで理解が格段に

アップした気がする。

昔からの緩い面白さは維持しつつ、訪れた国の複雑な状況に飄々と溶け込み、

その国の本質を分かり易い伝達技術はノンフィクションライターとしては

国内屈指ではないだろうか。

いや、アフワール情報に関しては世界でも最高峰かも。

アフワールという湿地帯に関しては当然知らない地域だが、

かつて反政府勢力が拠点とし、戦争の敗者、迫害を受けた人など、

様々な理由で逃げ込む人が集まる地域である。

だから梁山泊

水滸伝横山光輝さんの漫画でしか知らないが、水滸伝を知らなくても

問題ないでしょう。


イラクの中でも特に危険な地域な気もするが、地域の実力者を探り当て、

その名前をうまく利用することや、その実力者を頼ることで格段に動きやすくなる。

このあたりも梁山泊同様のシステムとのこと。

面白いのがその中に入り込むと客人として誰もが歓待してくれる。

知り合いが次々とご馳走させてくれと申し出てくれるのは有難いが、

量も半端ないようで高野さんたちもだいぶ往生していた。

だからと言って命の保証がない地域であることに変わりはないのだが。


土地の船大工に舟を作ってもらい、旅をする目標はいつものように

計画通りにいかずドタバタしているがそこが面白いところでもある。

知らないイラクの一面を垣間見ることができ、

危険地帯を探検する高野さんの面目躍如ともいえる本作は

分厚さを忘れさせるような面白さだった。