吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

文楽のこころを語る --竹本住大夫

「BOOK」データベースより引用
当代随一の浄瑠璃語りにして人間国宝である著者が、三大名作から十年に一度の珍しい演目まで十九演目について、作品の面白さ、詞の一行一行にこめられた工夫や解釈にいたるまで、芸の真髄を語り尽くした、すべての文楽ファン必携の書。文庫化に際し『菅原伝授手習鑑・寺子屋の段』と、狂言茂山千之丞氏との対談も収録。

 

本書は山本千恵子さんと言う方の聞き書きです。
「すべての文楽ファン必携の書」と書かれていますが、確かに文楽ファンの方は是非読んだほうがいいと断言できます。
文楽を何も知らない私が言うのは袋叩きものだということは理解しているうえでの断言です。
三浦しをんさんの文楽関係2作品を読んでから導かれるようにこの本を読みました。
三浦さん、文楽の世界を紹介してくれて感謝しているのですが、申し訳ない!
この本が一番面白く読めてしまいました!
「あやつられ文楽鑑賞」でも取り上げられている人物、竹本住大夫さん。
文楽を語る上で避けては通れない人です。)
文楽の演目もしきたりも演者も用語も知らない私がこの作品を楽しめ、好感を持てたのは竹本住大夫さんがひとりの人間として仕事、生き方に対する思いを謙虚に語られている点でした。
わからなくても読み続けているとわかったような気になるのですから不思議です。
関西弁で多くが語られ、その分、親しみやすく頭にスラスラと入りやすかったのかもしれません。
とにかく文楽を知らなくても、とても魅力的な人なんだということがヒシヒシと感じられます。
人間国宝だからといって驕らず、人に対する思い遣りがあり、その謙虚さの中にむしろプロとしての自負を感じました。


文楽の演目に関しての解釈は、文楽を知っている人にとってはとても有用な情報だと思われます。
多分ボロボロになるまで何度でも読んでしまうのではないでしょうか。
今後私が実際の舞台を観る機会があれば必ず携行しようと思いました。


本書にはいくつかのコラムがあり、その中のひとつに薬師寺の名物管長、高田好胤(こういん)(故人)との交友に関するお話がありました。お二人のやりとりには、つい目頭が熱くなりました。
また、巻末に掲載された狂言師の茂山さんとの忌憚のない対談も素晴らしいものでした。
人は死ぬまで勉強しないといけないなあと素直に思わせてくれる良書でした。


文楽って世界遺産だったんですね。
本書にもその話しが出てきましたが、不勉強なことに全く知りませんでした。。。