吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

パプリカ ::筒井康隆

女性誌に連載されていた作品ですが、ずいぶんとオッサンに都合のいいキャラや展開に苦笑してしまいます。
もともと筒井作品のナンセンスな作風は嫌いじゃありませんが、この作品に限っては
あまり好きになれませんでした。

 

ノーベル賞候補になっている主人公の千葉敦子は優秀なサイコセラピストで絶世の美女。
裏ではパプリカと名乗り、PT(サイコセラピー)機器を使って夢の中にジャックインし、人間の持つ様々な精神的な障害を取り除くという仕事をしてきた、という経歴の持ち主でもある。
この主人公のキャラがいまひとつ軽くて強いんだか弱いんだかイメージが安定せず、
それがこの作品に乗れなかった大きな原因だと思う。

 

主人公は「七瀬ふたたび」や「家族八景」のようにテレパスのような能力者ではないが、機械を使いながら夢と現実を行き来できる「技術」をもっている。
夢を人に見られるのはイヤだけど人の夢が見えてしまうのも辛そうだ。
設定としては面白いがキャラ設定やこの物語の混沌をもたらす「DCミニ」という機器についての説得力に欠けているような気がする。
主人公の周りを固める味方のオッサンたちには重みがなく、何事においても都合の良さが目に付く。
夢と現実の融合、物質の転送など何でもできてしまうため状況が掴みにくくなったのかもしれません。

 

ラストのカタストロフに関しても筒井康隆の得意とするところなので懐かしさを感じつつあまり集中して読むことができませんでした。
ただし、ラストの章を読んでこの作品の構成、実はよくできているかもしれない、と見直しました。
細かい事は考えず、筒井康隆のSFエンタメ作品を素直に楽しめるのは再読時なのかもしれません。


映画はまだ観ていませんが内容的には映像向きだと思うし、今年亡くなった今敏監督の作品でもあるのでそろそろ観たいと思います。